ひとり暮らしの認知症患者の服薬管理はどうする?

離れて暮らしているご家族さまが、認知症の方のひとり暮らしで特に不安を感じやすい問題が服薬管理です。
「毎日正しいタイミングで薬を飲めているのか」「薬の飲み忘れはないか」と心配するご家族さまも多いのではないでしょうか。
今回は、ひとり暮らしをする認知症の方が安心して薬を飲むための服薬管理の方法を解説します。
認知症の進行段階に応じて、飲み忘れないための工夫や利用できるサービスをお話ししますので、ぜひ参考にしてください。
目次
服薬管理とは
服薬管理とは、処方薬の誤用や飲み忘れを防ぎ、ご利用者さまや患者さまの健康をサポートすることです。
薬の量や飲む時間、副作用の有無を確認し、必要に応じて指導や調整をおこないます。
なお、服薬管理は医療行為にあたるため、医師・看護師・薬剤師にのみ認められており、介護士がおこなうことはできません。介護士がおこなえるのは、薬の準備や声掛け、飲み残しの確認、服薬後の見守りなど、服薬をサポートすることです。
一方で、看護師などは薬の準備や与薬、服薬指導、副作用の有無の確認など、より専門的なサポートをおこなうことができます。
看護師などの支援を受けながらおこなう服薬は、薬の飲み忘れや飲み方そのものも忘れてしまっていることがある認知症の方にとって、安全な服薬を支える上で重要な取り組みといえます。

ひとり暮らしの高齢者の割合
厚生労働省によると、2023年時点で65歳以上の高齢者を含む世帯のうち、約30%が単身世帯です。
また、国立社会保障・人口問題研究所がまとめた推計では、高齢者の単身世帯は2050年に1,000万人を超え、高齢者世帯全体の約45%を占めると予測されています。
認知症の方のひとり暮らしも年々増加しており、2025年には認知症患者の約25%がひとり暮らしになると予測されています。このような背景から、服薬管理のトラブルが懸念されています。

同居人がいる高齢者は、家族や同居人から薬の服用のサポートを受けやすい環境にあります。一方、ひとり暮らしの高齢者は周囲からのサポートを受けにくいため、薬の飲み間違いなどのリスクが高まります。
薬の飲み間違いなどのリスクを減らすためには、日常生活でできる工夫や外部サービスなどのサポートを活用することが重要で、その方の自立度に合わせて、適切な支援を検討することが大切です。
ひとり暮らしの認知症患者の服薬管理方法
ひとり暮らしの認知症の方の服薬管理方法を、認知症の進行レベルに合わせて紹介します。
【軽度1】服薬補助ツールの活用
軽度の認知症の場合は、視覚的に管理することで服薬を誤るリスクを抑えられます。
具体的には、以下の方法があります。

- 服薬カレンダー:日付ごとに薬を入れておくことで、服用した日にちがひと目でわかる
- 曜日別仕切りボックス:曜日ごとに仕切られることで、飲み忘れ防止に役立つ
- 電子服薬リマインダー:音や光で「薬を飲む時間ですよ」と知らせてくれる
- 処方設計の簡素化:医師に相談し、1日1回の服用にしてもらう、複数の錠剤をまとめてもらう
これらの方法は市販品やアプリを利用できるため、手軽に始められます。自立度の高い初期段階の認知症の方に適した方法です。
【軽度2】訪問薬剤師の利用
軽度の認知症の場合は、服薬補助ツールの活用に加えて薬剤師が自宅に訪問して薬の準備や指導をおこなう「訪問薬剤師」の利用がおすすめです。
訪問薬剤師は、以下のようなサポートをおこないます。

- 飲み忘れや飲み間違いを確認
- 薬を自宅まで届ける
- 服薬しやすい工夫を一緒に考える など
訪問薬剤師を利用する場合は、まずはケアマネジャーに相談しましょう。訪問診療などの居宅療養指導と組み合わせて利用することが一般的です。
利用できる回数は、薬局に勤務する薬剤師の場合は月4回まで、医療機関に勤務する薬剤師の場合は月2回までと決められています。回数に制限があるため、日常生活の中である程度自分で服薬を管理できる軽度の認知症の方に向いています。
【中度】家族がタイミングをみて電話する
中程度の認知症の場合は、毎日決まった時間に家族が電話をかけて服薬を促す方法がおすすめです。電話中に実際に薬を飲んでもらい、飲み終えたことを確認すると安心できます。
この方法は医師や薬剤師に依頼せずに始められるため、手軽に取り入れられるのも特徴です。
ただし、家族が毎日時間を割く必要があるため、負担はやや大きくなります。それでも、確実に薬を飲み続けてもらうためには有効な方法です。

【重度】訪問看護やデイサービス利用時に服薬
症状が進行した認知症の場合は、自分だけでの服薬管理が難しくなるため、外部サービスのサポートの導入がおすすめです。

外部サービスでは、以下のようなサポートを受けることができます。
- ヘルパーや看護師に服薬を手伝ってもらう
- デイサービス利用時にスタッフに服薬介助をしてもらう など
こうした地域のスタッフや専門家の支援があると、ご本人さまやご家族さまが安心して生活することができます。ただし、服薬時間の調整やサービス利用のタイミングについては、必ず医師や薬剤師、ケアマネジャーに相談しましょう。
セルリアがおこなう訪問看護の服薬管理
セルリアの訪問看護では、ご利用者さまの認知機能の状態や人柄、ライフスタイルに合わせて最適な服薬管理を提案しています。
まずは、現在の服薬を管理できる程度やこれまでの管理方法、そしてご利用者さまの個性を把握します。次に、ご利用者さまがご自身でお薬を服用できるよう、自尊心を大切にしながらサポートする方法や、飲み忘れを防ぐ工夫を一人ひとりに合わせて検討します。その際には、ご家族さまのご意見も伺い、参考にさせていただきます。

これまでご自身でお薬を管理されていたご利用者さまの中には、初めて訪問した看護師が一方的に服薬管理をおこなうことに抵抗を感じる方もいらっしゃるかもしれません。
セルリアでは、薬の一包化や視認性改善のご相談、内服カレンダーへのお薬のセットなどを、ご利用者さまと一緒におこないます。この他にも、しっかりとコミュニケーションをとりながら、ご利用者さまが自己管理への意識を高められるようサポートしていますので、安心してご利用ください。
まとめ
ひとり暮らしの認知症の方の服薬管理は、症状の段階に合わせて検討しましょう。
認知症の方が服薬をきちんと続けるためには、ご本人さまの努力だけでなく、ご家族さまや周囲のサポートも欠かせません。
しかし、服薬は毎日続ける必要があるため、ご本人さまにとってもご家族さまにとっても無理なく続けられることが大切です。
そのため、医療機関や地域包括ケアシステムの支援を利用するだけでなく、医師・看護師・薬剤師・ケアマネジャーなどの専門職にも相談することをおすすめします。
ひとり暮らしの服薬管理は「DSセルリア」
当社では、訪問看護とリハビリ型デイサービスを提供しています。
「トータルリハセンター(TRC)」では、機能訓練などに加え、摂食・嚥下機能訓練や口腔清掃、口腔機能向上のためのプログラムなど多角的に日常生活動作(ADL)の維持・改善に取り組んでいます。
「DS訪問看護ステーション」では、病気や障害のある方が住み慣れた地域やご自宅でその人らしい暮らしができるよう、看護師や理学療法士・作業療法士などがご自宅に訪問して、その人にあった看護やリハビリテーションを提供します。また、ご利用者さま一人ひとりの個性を大切にした対応をおこない、ご本人さまの日常生活に無理なく取り入れられる服薬管理を心掛けています。
施設見学・ご相談は随時受け付けております
ご自宅での介護に関してお困りのことがございましたら、どうぞお気軽にお問い合わせください。
DSセルリア株式会社では、東京・千葉エリアにリハビリ型デイサービス「トータルリハセンター」や訪問看護ステーションを設け、地域に根ざした「訪問看護・リハビリテーションサービス」を提供しています。
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