ご存じですか?口腔ケアのこと
目次
ご存じですか?口腔ケアのこと
~高齢者に必要な口腔ケアとメリットについて~
「口腔ケア」をご存じでしょうか?
加齢とともに体の機能が衰えると、ご自身で口腔環境を整えることが難しくなるため、介護者が代わりに口腔内をケアする必要がでてきます。
お口の中を清潔にすることで心地よさや爽快感が得られるだけでなく、生活の質(QOL)の向上や全身の健康維持・向上につながります。
この記事では、口腔ケアの重要性や効果についてご紹介しますので、ぜひ参考にしてください。
口腔ケアとは?
高齢者の口腔機能の衰え(オーラルフレイル)が全身の衰えにつながることがわかり、オーラルフレイル予防の重要性が注目されています。
介護リスクを高めるオーラルフレイルのサインを「口腔ケア」で発見し、改善することも大切な役割です。
「口腔ケア」とは歯みがきなどでお口の中をキレイに保つだけでなく、健康保持や口腔機能向上のためのリハビリなども含む幅広い内容となります。
一般的な口腔ケア
一般的な口腔ケアには、下記などがあります。
- 歯科検診
- 口腔清掃
- 入れ歯(義歯)の着脱とお手入れ
- 咀しゃく・嚥下(えんげ)のリハビリ
- 歯茎・頬部のマッサージ
- 食事の介護
- 口臭の除去
- 口腔乾燥予防
高齢者の口腔内 “5つの特徴”
高齢者には口腔ケアが必要になる“特徴”が見られます。ここでは5つの特徴について説明します。
補綴(ほてつ)物治療・入れ歯(義歯)が多い
入れ歯を使用している方や治療による補綴物(つめ物・かぶせ物)が多く見られます。加齢や歯周病による歯茎の後退が主な原因で、補綴物の中でむし歯が進行しているケースがあります。
自浄作用(じじょうさよう)が低下する
唾液には「自浄作用」という働きがあります。歯の表面や歯と歯のすき間、舌などのお口の粘膜に付着した汚れや細菌を唾液が洗い流し、お口の中を清潔に保つ力のこと。高齢者は、口腔内乾燥などによって自浄作用が低下している場合があります。
むし歯 や粘膜疾患が増える
ご自身でのケアが十分にできなくなると、お口の中の汚れや細菌などが口腔内で増殖し、むし歯や歯周病の原因をつくりだします。
また、加齢に伴い免疫力が落ちることで歯周病や口内炎、義歯性腫瘍などの粘膜疾患を進行させます。
食べ物がお口の中に残る
高齢者には、食事形態を変えた「きざみ食」や「とろみ」をつけたお食事を提供することがあります。きざみ食は歯のすき間や口腔内に食べかすが残りやすく、ペースト食は粘り気が強いため口腔内に長く停滞しやすくなります。
口腔内が乾燥する
唾液分泌量の減少は、加齢に伴うものや内服薬の副作用などがあります。口腔内が乾燥すると「噛む」「飲み込む」「発声する」ことが難しくなり、「入れ歯が痛くて入れられない」などの症状が現われることがあります。
口腔ケアの種類
口腔ケアの種類には大きく2つに分類されます。
これらを組み合わせて行うことで、口腔機能を維持向上させます。
器質的口腔ケア
お口の中の細菌や汚れを取り除き、口腔内を清潔に保つため
歯の汚れだけでなく、歯茎・舌・頬の内側・上あごなどに付着した汚れも取り除き、細菌の繁殖を抑えます。お口の中の細菌は、歯周病や誤嚥性肺炎などにつながる恐れもあるので清潔にしておくことが大切です。
機能的口腔ケア
お口の機能を回復させ、維持・向上するため
口腔機能とは主に、噛む・飲み込む・話す。笑うなど、お口の働きのことです。お口の筋肉も鍛えなければ衰えてしまうので、お口の中や口周りのマッサージ、飲み込む力を鍛えるトレーニングやリハビリなどを行います。
口腔ケアのメリット
口腔内のトラブルを放置しておくと、むし歯や歯周病の悪化だけでなく、さらなる口腔機能の低下や全身疾患、認知症などにつながる恐れがあります。口腔ケアにより期待できる効果をまとめました。
誤嚥(ごえん)性肺炎の予防
誤嚥性肺炎には2つの種類があります。
高齢者の場合には睡眠時など、知らない間に唾液を誤嚥してしまっているケースも多く「誤嚥性肺炎」は亡くなる原因の高位にあります。
【2つの誤嚥性肺炎】
- 食道へいくべき「食べ物」が誤って気管に入ってしまう
- 唾液を飲み込む際などに「唾液中の細菌」が誤って肺に入ってしまう
これらを防ぐためには嚥下機能を維持向上させる必要があり、「嚥下体操」をはじめとするお口と、のどのリハビリテーション方法があります。
認知症の予防に有効
歯周病は全身疾患のリスクを高めるだけでなく、認知症を発症・進行させるしくみが明らかとなっており、口腔清掃による歯周病の予防は認知症の予防にもつながります。
また咀しゃく運動は、脳を刺激するほか酸素と栄養を送ることから、認知機能低下を予防する効果があるといわれています。健康な歯を失っても、人工の歯で噛める状態にして維持していくことが、認知症の予防に有効です。
口腔乾燥症(ドライマウス)を予防する
軽度では主に口の中のネバネバ感、ヒリヒリする・むし歯・歯垢の増加・口臭が強くなるなど。重度になると、唾液分泌量が低下して口腔内の乾きが進行する、強い口臭・舌表面のひび割れ・痛みで摂食障害・会話しにくい、などの障害が現れます。口腔内にある唾液腺に刺激を与えるマッサージなど、症状に合った対応が必要です。
QOLの向上
口腔ケアを行う最大の目的は、 QOL(クオリティ・オブ・ライフ=生活の質)を高め、 口腔から全身の健康維持をすることです。「好きなものを食べる」「会話を楽しむ」「元気に笑う」などは、「その人らしさ」を引き出す大切な要素。口腔環境や機能の悪化は、健康面だけでなく心理面への影響も大きいため、高齢者のQOLを向上させる大きなカギとなります。
口腔ケアをはじめる前に知っておきたいこと
口腔ケアは、歯みがきやうがいなどでお口の中を清潔に保ち、お口の状態や機能に関するケアを行うことです。
効果的なケアのために、知っておきたい準備やスムーズに行うためのポイントなどを紹介します。
口腔ケアのタイミングは?
口腔ケアは毎食後に行い、清潔にすることが基本です。
また、食前の口腔ケアで口腔内の細菌数を減らし、誤嚥性肺炎を予防するケアも推奨されています。
ですが口腔ケアのタイミングや回数などに、決まりはありません。毎日の生活リズムの中で、口腔ケアのタイミングを検討してみましょう。
自分でケアできる?介助が必要?
うがいや歯みがきも本人ができる場合には、まずは本人が行うようにしましょう。
介助する人は仕上げみがきをする要領で行います。
本人でできない場合は、口をしっかり大きく開けることができるかを確認してください。
十分に開かないと、口腔ケアが難しい場合があります。
痛がる場合やうまく口を開けることができない場合は、歯科医師に相談することをおすすめします。
ケアをする場所は?
ケアする方の身体状況によって洗面所や寝室、ベットの上など、誤嚥しにくい安全で安楽な姿勢や体位をとることできる場所で行うことが大切です。
口腔ケアを行うと、お口が刺激されて唾液がでてきます。
あごが上がった状態などでは、誤って唾液が肺に入ってしまうために発症する「誤嚥性肺炎」を引き起こしかねません。座位や半座位は、誤嚥しにくい体位であるとされます。
ケア方法を考える
どのようなお口の状態かを確認したうえで、必要な口腔ケア用品を選びましょう。
入れ歯の着脱は本人にやってもらう、食後のうがいは本人にまかせるなど、できることは本人が行うことで、プライドに配慮することができます。
口腔ケアのための器具
口腔ケアのための器具はお口の中にはやさしく、入れ歯はしっかりとケアできるように作られています。
ケア用品の使用後はよく洗って乾かし、細菌の繁殖を防ぎましょう。
よく使用するもの
歯ブラシ
毛はナイロンで柔らかめ。交換の目安は1~2か月に1本。使用後は流水で10秒ほど洗い流し、歯ブラシの毛の間にはさまった食べかすは取り除くようにします。
電動歯ブラシ
高齢者が自分で使う場合はもちろんのこと、介助に用いるときにも活躍してくれます。電動歯ブラシでは細かなところまでみがけないので、仕上げみがきやデンタルフロスなどと組み合わせて使うことが理想です。
入れ歯専用ブラシ
毛はナイロンで固め。毛の部分の面積が広く入れ歯の清掃に適しています。 柄の握る部分が太く持ちやすいため、力を入れてみがくことができます。
コップ
落としても割れないプラスチック製のもので、取っ手のついた持ちやすいものだと、安全に使えます。
スポンジブラシ
先の部分がスポンジのブラシで お口に入りやすく、ケアしたい部分や用途に合わせて使い分けがしやすくなっています。適度な弾力があり、奥までしっかり届く長さがあり、粘膜のケアに役立つ便利な使い捨て器具です。
保湿剤
乾燥しがちな口腔内に潤いを与えきれいにし、口臭を予防する口腔内のための保湿ジェル。口腔ケアの前後や就寝前などに塗布すると効果的です。
口腔ケア用ウエットティッシュ
ノンアルコールで保湿成分が入っています。指に巻いて、やさしく口腔内の汚れを拭き取るために使います。使用後のうがいが要らないので、うがいができない方の口腔ケアには必需品です。
寝たきりの方などのベッドサイドで、手軽に口腔内の拭き取りができます。
必要に応じて使用するもの
歯間ブラシ
歯と歯のすき間が広い場合のすき間の清掃に適しています。歯間ブラシは、歯科医院で使い方の指導を受けるようにしましょう。
デンタルフロス
歯と歯のすき間が狭い場合の清掃に適しています。とくに、歯ブラシでは届かないすき間の歯垢を絡め取ることができます。
舌ブラシ
舌苔(舌についた汚れ)の清掃に適している舌ブラシは、歯ブラシよりも毛が柔らかくできていて嘔吐反射(えずき)がでにくくなっています。
洗口液
洗口液(マウスウォッシュ)は乾燥しがちな口腔内に潤いを与えながら、やさしく洗浄する低刺激タイプがおすすめです。うがいの際などに使用します。
洗口液
洗口液(マウスウォッシュ)は乾燥しがちな口腔内に潤いを与えながら、やさしく洗浄する 低刺激タイプがおすすめです。うがいの際などに使用します。
歯みがきジェル
研磨剤を含まない、またはごく少量の研磨剤が含まれている、歯や歯茎にやさしい低刺激でジェル状の歯みがき剤です。泡の立たないものなど、さまざまな種類があります。
ガーゼ
柔らかく、口腔内を傷つけにくいため、お口のマッサージを行う際に指に巻いて使用します。汚れの清掃にも適しています。
ガーグルベースン(のう盆)
洗面所以外の場所でうがいをする際に受け皿として使用します。 ガーグルベースンを使用したうがいの場合は誤嚥予防のため、真正面ではなく横を向いてもらうと良いでしょう。
基本的な口腔ケアの手順まとめ
歯みがきの前に保湿、「ブクブクうがいをする」
口腔内が乾燥した状態で口腔ケアを行うと、汚れがしっかりとこびりついていて、取り除くのに時間がかかります。
汚れを落としやすく、痛みの少ない口腔ケアのためには保湿が必要です。
口腔ケアの前にブクブクうがいをするようにしましょう。口腔内が潤うほか、お口に残った食べかすも取り除けます。
ブクブクうがいはお水だけでもいいのですが、特に乾燥が気になる方の場合は、潤いを与える低刺激タイプの洗口液が効果的です。
歯みがきをする
歯ブラシは鉛筆を持つよう(ペングリップ)に持ってみてください。余計な力が入りにくく、小回りがきき、毛先が動くため歯にきちんとあててみがくことができます。本人が自分でみがく場合は、普段から慣れている持ち方でも良いでしょう。握力の低下している方は、歯ブラシを手のひら全体で握る(パームグリップ)と持ちやすくなります。
歯みがき剤は小豆1粒分から大豆1粒分が適量です。誤嚥の危険性が気になる場合は、泡の出ない(発泡剤の含まれていない)ジェルタイプの歯みがき剤を使用しましょう。
歯ブラシ選びのポイント
歯ブラシの植毛部分の大きさは、中指の第1関節、もしくは上の前歯2本分の大きさを目安にすると良いです。
固さはふつう~やや柔らかめで、毛質はナイロンのものがおすすめ。
粘膜や舌のケア
スポンジブラシのスポンジ部分を水で湿らせて、お口の頬の内側や唇の内側、歯茎、上あご、舌などの汚れをやさしく取り除きます。
スポンジブラシはお口の中に入れるものですので、衛生面を考慮する意味でも1回の使用で捨てるようにしましょう。
舌ブラシは歯がない人にも行うと良いケアです。舌専用ブラシを使い、無理のない範囲で行います。
口腔ケア専用ウェットティッシュ
ノンアルコールで保湿成分が入っているため、お口をケアする際にも安心して使うことができます。口腔ケア用ウェットティッシュそのものが水分を含んでいるため水を使う必要がなく、誤嚥の危険性が高い方の粘膜のケアをする際におすすめです。
基本のケアは、歯みがき、舌や粘膜のケアが一通り終わったら、再度ブクブクうがいをして終了です。
入れ歯のケア
入れ歯はできれば毎食後外して、すすぎましょう。ぬるぬるした汚れ(歯垢)はすすいだだけでは落ちないので、流水にあてながら入れ歯専用ブラシでしっかりみがきます。毎回入れ歯をブラッシングすることが難しい場合は、毎食後はすすぎを行い、1日1回ブラッシングするなど、無理のない範囲で行いましょう。
入れ歯洗浄剤
市販の入れ歯用洗浄剤は、ブラッシングの代わりではなく、ブラシでは取れない汚れ(見えない汚れや色素沈着など)に対して補助的に使うものと考えましょう。
短時間で洗浄が終わるものや就寝の間浸けておくものなど、さまざまなタイプがあります。生活パターンや入れ歯の種類に合ったものを選ぶのがポイントです。
まとめ
本記事では、高齢者の口腔ケアの目的やメリット、口腔ケアの手順などについて解説してきましたが、いかがでしたか?
高齢者の口腔機能の衰え(オーラルフレイル)や口腔内のトラブルは、むし歯や歯周病の悪化だけでなく全身疾患や認知症などにつながる恐れがあります。
セルフケアに加え、歯科医院を利用したプロフェッショナルケア、また口腔ケアに特化したデイサービスの利用や、訪問看護・訪問歯科診療を利用して口腔ケアを依頼するなど、日々のケアを実施しましょう。
お口の健康=“健口”を目指すリハビリ型デイサービスのご紹介
DSセルリア株式会社では、口腔と身体のリハビリに本気で取り組むリハビリ特化型デイサービス「トータルリハセンター(TRC)」を運営しています。
「トータルリハセンター(TRC)」では、身体の機能訓練などのプログラムに加え、嚥下(飲み込み)訓練や口腔機能向上のためのプログラムを加えることにより、全身の健康の維持と身体機能の回復を目指します。
脳血管疾患後の介護保険で対応する維持期のリハビリ等を理学療法士・作業療法士が、口腔ケアや口腔リハビリを歯科衛生士が主導し、ご利用者さまに提供しています。
施設見学・ご相談は随時受け付けております。
ご自宅での介護に関してお困りのことがございましたら、どうぞお気軽にお問い合わせください。