高齢者が見やすい色とは?見やすい配色を意識した安全な環境づくり

年齢を重ねるにつれて身体にはさまざまな変化が現れます。その中でも「見え方(視覚)」の変化は、日常生活に影響を与える重要な問題のひとつです。
一方で、多くの高齢者は自分の視覚の変化に気付きにくい傾向があります。そのため、ご家族さまや介護に携わる方が高齢者の視覚特性を正しく理解し、適切な配慮をすることが重要です。
今回は、高齢者の視覚がどのように変化するのかをはじめ、見やすい色や見えにくい色などについてお話しします。
先天的な色覚異常との違いや、色が高齢者の心理面に与える影響についてもご紹介しますので、高齢者が安全で快適に暮らすための環境づくりのヒントとして、ぜひ参考にしてください。

目次
高齢者の視覚特性
高齢者の視覚特性を理解することは、安全で快適な暮らしを支える第一歩です。
加齢と共に目に変化が生じ、見え方や色の認識に影響が及びます。

加齢による主な視覚変化
加齢によって眼球の水晶体が柔軟性を失って硬くなるため、ピント調節が難しくなり、老眼や視力低下などの症状が現れます。
また、水晶体が黄変する(黄色味を帯びる)ことで、色の識別や明暗・濃淡のコントラスト感度も低下します。特に青色などの寒色系は色の波長(可視光線)が短く、目に届きにくくなる傾向があります。
その結果、本来青く見えるはずの信号機やガスコンロの炎が灰色に見えてしまうことがあるため、注意が必要です。
視力低下の気付きにくさとリスク
高齢者の視覚変化は、自覚しにくいという特徴があります。視力の低下はゆっくり進行するため、本人が変化に気付かないまま生活していることも少なくありません。
その結果、段差に気付かず転倒してしまったり、信号を誤認して事故につながったり、薬のラベルを見間違えて誤った薬を飲んだりするといった危険につながる恐れもあります。
また、物の輪郭がぼやける「コントラストの低下」は、暗い場所の転倒や物にぶつかるなどのリスクが高くなるため注意が必要です。
周囲の理解と環境づくり
ご家族さまをはじめとする周囲の方は、高齢者が若い人と同じように色を見分けられない場合があることを理解した上で、生活環境を整える必要があります。
たとえば、段差やスイッチにはっきりした色の違いをつける、照明を明るくする、大きな文字で表示するなど、見やすさを意識した工夫が効果的です。
加齢に伴う視覚の変化を正しく知り、高齢者が安心して暮らせる環境を整えることが安全で自立した生活を支えることにつながります。
色覚異常との違いを知って適切な配慮を
高齢者の視覚変化と先天的な色覚異常は、原因も見え方の特徴も大きく異なります。
加齢による視覚変化の特徴
40代頃から始まる水晶体の黄変は、年齢とともに進行し、80代頃になると茶色いフィルター越しに世界を見ているような状態になるといわれています。そのため、視界が暗く感じられ、色の見分けがつきにくくなります。
これらの視覚変化の多くは白内障によるもので、70代以上になると約9割の人に見られると報告されています。
また、白内障は左右の目で進行の程度が異なることもありますが、手術によって視覚の改善が期待できる点が特徴です。

先天的な色覚異常との違い
先天的な色覚異常は、遺伝などによって生まれつき特定の波長を感じ取りにくい状態です。
視力や視野に問題はなく、両眼で同じように色が見えるものの、治療によって改善することはできません。
高齢者は主に青系の色を識別しにくいのに対し、先天的な色覚異常の場合は赤と緑、青と紫の組み合わせが区別しにくい特徴があります。
高齢者が見やすい色・見にくい色の特徴
高齢者の色の見やすさは、明度(明るさ)や彩度(鮮やかさ)、そして背景とのコントラストが大きく影響します。これらの要素を意識することで、高齢者にとって見やすく、安全性の高い環境づくりにつながります。
見やすい色の条件
明るく彩度の高い赤やオレンジ、黄緑などの色は、水晶体の黄変が進んだ目にもはっきりと発色し、見やすい色です。
また、背景とのコントラストを強くすることで、段差や手すりなどの形状が際立ち、転倒防止にもつながります。
おすすめの配色例は次のとおりです。
- 白 × 赤
- 白 × 青
- 白 × ピンク
- 白 × 深緑
- 黄緑 × ネイビー

これらは明度差が大きいため見やすく、安全性も高い組み合わせです。
見えにくい色と危険な組み合わせ
明度や彩度が近い色同士を組み合わせると、境界がぼやけて見えにくくなります。
次のような配色は特に見えにくい組み合わせです。
- 黒 × グレー
- 黒 × 茶色
- 黒 × 青
- 黒 × 緑
- 青 × 茶色
- 水色 × ライトグレー

浴室やトイレなどで床と段差の色が似ている場合、段差に気付かずに転倒する危険もあります。そのため、高齢者が見分けにくい配色はできるだけ避けましょう。
また、青・黄色・グレー・紺・シルバー・茶色・淡いピンクなどは、高齢者には暗く見えたり、逆に白っぽく見えたりしやすいため注意が必要です。
生活用品での応用例
日常生活の中でも、さまざまな場面で色を工夫することが大切です。
たとえば次のような工夫が効果的です。
〇食器
白いご飯が映えるよう、濃い色の茶碗を選ぶ。
●住環境
手すりや階段、スイッチと壁を、黒と白・黄色と黒などのコントラストがはっきりとした配色にする。
このように、明度・彩度・コントラストを意識した配色を取り入れることで、高齢者にとって安全で快適に暮らせる環境を整えることができます。

色が高齢者に与える影響と効果
水晶体が黄変して視界が暗く感じられるようになると、色は単なる見た目の問題だけではなく、心理面や生活の質(QOL)、さらには事故リスクにも影響を与える重要な要素となります。
色の心理的効果
色は気分や行動に直接働きかけ、高齢者の心理状態や行動意欲に影響を与えます。

赤・ピンク
黄変した目でも色がはっきり映りやすく、「活力」「若々しさ」「自信」といった前向きな感情を引き出して気分を明るくします。
オレンジ
赤やピンク同様にはっきりと見えやすく、「元気」「わくわく」という印象を与え、日常生活での行動意欲を高めます。
緑
水晶体の黄変による影響をほとんど受けずに識別でき、「安心」「平穏」を連想させる色です。リラックス効果と孤独感の軽減につながります。
水色
「自由」「創造性」を感じさせ、気分を軽やかにする効果があります。
黄緑
「希望」「前向きさ」といった印象を与え、穏やかで明るい気持ちを引き出してくれます。
色による行動支援の工夫
色の心理的効果とはっきりとしたコントラストの配色を組み合わせることで、生活の安全性と快適さを高めることができます。

○ バッグの内側を白色にして、赤やピンクの小物を入れる
探し物が見つけやすくなると同時に、「活力」「自信」といった前向きな感情を感じやすくなります。
● 黄緑の小物入れにネイビーの小物を合わせる
視認性を確保しつつ、「希望」「前向きさ」などの感情を促す環境づくりにつながります。
○ 白いテーブルに深緑の食器を合わせる
落ち着きと安心感をもたらし、食事を楽しむ気持ちを高めます。
● お風呂場に白と青の組み合わせを取り入れる
心理的に開放感を与えながら、安全性の向上にもつながります。
このように、色彩による安心感と前向きな感情は、外出や人との交流への意欲を引き出し、高齢者の生活の質(QOL)を総合的に高める効果があります。
まとめ
高齢者の視覚は、水晶体の黄変によって青系の色が識別しにくくなるなど、白内障をはじめとする後天的な変化を伴います。その結果、段差や信号の色を誤って認識してしまうなどのリスクが生じます。こうした変化は高齢者自身が気付きにくいため、階段や手すりなどには赤やオレンジ、緑といった鮮やかな色や、白と黒などのはっきりと見やすいコントラストを用いて輪郭を強調し、転倒事故を防ぐ工夫が欠かせません。
また、色彩設計は安全性だけでなく、心理面にも好影響を与え、外出や交流への意欲を高めます。
このように、身近な色使いの工夫と、専門的なケアを組み合わせることで、高齢者が安全で前向きに暮らせる生活環境を整えていきましょう。
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