関節痛(膝の痛み)の原因と予防・改善方法
冬になると膝や腰、肩の関節の痛みが増すことはありませんか?
関節痛の原因はさまざまですが、寒い時期は「血行不良」が挙げられます。
冬場は寒さで血管が収縮するため、血流が悪くなって、筋肉が冷えてこわばり、関節に大きな負担を与えて痛むことがあります。
また季節に関係なく、「立ち上がると膝が痛い」「膝が痛くて階段の昇り降りがつらい」という方は、変形性膝関節症かもしれません。
今回は、膝の痛みなど、関節痛の原因と予防・改善方法をご紹介します。
関節痛とは、関節のまわりで生じる痛みのことです。
関節痛は、膝・肘・手指や足指の関節・手首・腰といった部位に発症します。
関節の痛みの原因には、「筋肉と腱の問題」、「骨と軟骨の問題」の2つがあります。
筋肉と腱の問題
肩の筋肉や腱が原因で起こる疾患としては、いわゆる四十肩・五十肩(肩関節周囲炎)や腱板断裂が代表的です。肩関節周囲炎は、加齢に伴う組織の老化だけでなく、運動不足や悪い姿勢が発症リスクを高めます。一方、腱板断裂は関節の使いすぎが原因となることがあります。
骨と軟骨の問題
骨や軟骨が原因で起こる疾患としては、「変形性関節症」が代表的です。これは加齢に伴い、関節を構成する骨と骨の間にある軟骨がすり減り、滑らかな動きや衝撃を吸収する役割を果たせなくなる状態です。結果的に、骨同士が擦れ合い、膝関節や股関節に痛みや違和感が生じます。
特に全身の体重を支える膝の関節は日々多くの負担がかかっているため、痛みが生じやすい部位です。
膝に痛みを抱える日本人は1000万人以上といわれ、一番多いのが関節の老化ともいえる「変形性膝関節症」です。
最も多い膝の痛み、「変形性膝関節症」とは?
変形性膝関節症は、膝の骨が変形することで炎症が発生すると水がたまることにより、痛みが生じる疾患です。
特に男女比は1:4の割合で女性に多く見られ、加齢とともに罹患率が高まります。女性に多く発症する主な理由は以下の4つです。
- 筋肉量の違い
男性に比べ、女性はもともと筋肉量が少ないため、より軟骨に負担がかかりやすく、すり減りやすい状態にあります。 - 骨盤の広さと筋力の差
女性は骨盤が広く、下肢の横揺れを支える筋力が男性より弱いため、膝にかかる負担が増します。 - 加齢による体重増加
一般的に年齢とともに基礎代謝が低下し、太りやすくなることで、膝関節への負荷が大きくなります。
特に加齢による基礎代謝低下の主な原因は筋肉量の減少です。女性はもともと筋肉量が少ないため、男性と比べ、顕著に現れます。 - エストロゲンの減少
閉経後に女性ホルモンであるエストロゲンの分泌が減少し、骨が弱くなるため、膝への影響が大きくなります。
エストロゲンは、卵巣から分泌されるホルモンで、骨や軟骨、筋肉を健康に保つ重要な役割を果たします。
女性が変形性膝関節症にかかりやすい背景には、これらの要因が関係しています。
変形性膝関節症:進行度に応じた症状の変化
軽度
痛みの強さ
日常生活はほぼ問題なく過ごせるが、歩き始めるときに軽い痛みがある。ただし、痛みはすぐに消えることが多い。
関節の変形
軟骨が徐々に減少し、軟骨表面に亀裂が入る。
O脚の程度
膝と膝の間に少し隙間ができる程度。
膝の症状
- 朝、起きたときに膝がこわばることがある。
- 立ち上がるときや階段の昇り降りで膝が重く感じる。
中等度
痛みの強さ
身の回りのことはなんとかできるが、痛みが強くなり、持続することもある。痛みのために正座ができない。
関節の変形
軟骨がさらにすり減り、骨と骨の間が狭くなる。
O脚の程度
O脚が進行し、膝が外側に向いてくる。
膝の症状
- 膝に腫れがあり、水がたまることがある。
- 膝が完全にはまっすぐ伸ばせない。
重度
痛みの強さ
強い痛みにより、身の回りのほとんどのことができなくなる。歩行も困難で、非常に強い痛みが続く。
関節の変形
軟骨がほとんど消失し、骨同士が直接ぶつかる状態になる。
O脚の程度
O脚がさらに進行し、膝全体が大きく変形する。
膝の症状
- 膝全体が大きく腫れ、変形が目立つ。
- 膝関節が不安定になり、グラグラする。
変形性膝関節症の原因
変形性膝関節症は、多くの人が悩む膝の痛みの原因です。
ここでは、その主な4つの原因について説明します。
ただし、じん帯や半月板の損傷、骨折、化膿性関節炎などの後遺症からも二次的に発症することがあります。
1. 加齢
関節軟骨は約75%が水分で、ヒアルロン酸により弾力を保っています。
しかし、加齢とともにヒアルロン酸が減少し、軟骨が摩耗していきます。結果として、大腿骨と脛骨が直接ぶつかり、激しい痛みを引き起こします。
また、すり減った軟骨や半月板の破片が滑膜を刺激し、炎症と痛みを生じることもあります。
2. 太ももの筋力低下
太ももの大腿四頭筋は膝の動きをサポートし、体重をバランスよく膝にかける役割があります。
しかし、この筋肉が弱まると膝への負荷が増え、膝が内側に変形して軟骨がさらにすり減り、痛みが出やすくなります。
3. 肥満
膝には歩くときに体重の3倍、階段の昇り降りでは体重の6倍もの負荷がかかります。
体重が増えると膝にかかる負担も増え、関節に大きなダメージを与えやすくなります。
4. 外力
激しいスポーツや膝に過度な負荷をかける活動では、膝に外力がかかり、軟骨がすり減りやすくなります。
長期間にわたる負荷やケガにより、関節が損傷し、痛みやじん帯の断裂が起こることもあります。
運動時には無理をせず、膝を保護することが大切です。
これらの要因が組み合わさることで、関節痛が進行しやすくなるため、予防対策が重要です。
関節痛(変形性膝関節症)の予防・改善方法
関節痛、特に変形性膝関節症は加齢とともに進行するため、現時点で痛みがない場合でも予防が重要です。
関節痛の原因には日常生活のスタイルが深く関わっており、「動かさない⇒膝が痛む⇒さらに動かさない⇒さらに痛む」という悪循環に陥りやすいです。
これを防ぐために、次のことに気を付けましょう。また、すでに痛みがある場合でも、これから紹介する対策を実践することで症状の改善が期待できます。
膝の関節に負担をかけない生活
膝の関節に負担をかけない生活を習慣化することで、関節痛の予防や痛みの軽減ができます。
- 肥満気味の人は体重を減らす
- 膝関節を冷やさない(寒い季節はサポーターなどで温める)
- 同じ姿勢を続けない
- 膝を伸ばし、かかとから着地、つま先で後ろへ蹴るという正しい歩き方にする
- クッション性の高い、足に合った靴を選ぶ
- O脚の人は靴のインソールなどで補正する
痛みで歩きづらい場合は、杖などを使って歩行時の膝への負担を軽減しましょう。
痛みのほかに腫れや赤みなどの炎症がある場合は医療機関で診察を受けてください。
ストレッチや筋力トレーニングで血流UP
運動療法は、怪我や病気の治療、予防、リハビリテーションを目的とした、身体運動を活用する治療法です。特に、変形性膝関節症のような関節疾患、腰痛、筋力低下などの症状を改善し、痛みを軽減し、身体機能を向上させるのに有効です。
膝の痛みを予防するためには太もものトレーニングをおこない、膝関節の衝撃から膝を守る大腿四頭筋の筋力を鍛えましょう。
効果的なのは、痛みの初期段階でおこなうことですが、痛みをまだ感じていない人も予防としておすすめです。
関節痛予防のストレッチに「グッチューブ」をご紹介
ご紹介するのは、腰や膝の痛みを和らげるのに効果のあるストレッチです。動画を見ながら、一緒に取り組みましょう。
関節を動かさずにいると、まわりの筋肉が衰えて動きが悪くなり痛みも起こりやすくなりますが、ストレッチで柔軟性を高めると痛みが和らぎます。
適度な運動を心掛け、膝のまわりの筋肉を鍛えましょう。
血流改善のストレッチ(臥位・座位)
寒い時期になると、血流が悪くなり関節痛を引き起こす傾向があります。
関節痛は運動不足などにもつながり、体に悪影響を及ぼします。
適度なストレッチで体の血行を促進し、関節痛を予防しましょう。
ご紹介するのは、タオルやイスを使った室内で簡単にできるトレーニングです。
膝の痛みを予防する太ももトレーニング(臥位・座位)
関節痛の対処法として、痛みが軽いうちであればストレッチが効果的です。
ストレッチで、じん帯や筋肉がしなやかになり柔軟性が増すと、関節を囲む筋肉のバランスが整い、動きがスムーズになります。
関節痛を食事で予防・改善
「冷え」は体にさまざまな不調を引き起こす要因で、関節痛の原因の一つでもあります。体を温める食材を積極的に取り入れることで、血行を良くし、新陳代謝を促進し、冷えを改善しましょう。
以下のポイントで冷え対策を意識した食事を取り入れることが大切です。
体を温める食材
生姜やにんにく、とうがらし、よもぎなどの食材は、血流を良くし体を温めます。これらを日常の食事に積極的に取り入れ、冷えによる関節痛を予防しましょう。
体を温める食材例:生姜、にんにく、シナモン、山椒、羊肉、鶏肉、もち米、黒砂糖、長ねぎ、エビ、八角、紅茶、ジャスミン茶など。
体を冷やす食材
水分の多い野菜や果物は体を冷やす効果があり、暑い季節には体温調整に役立ちますが、冷えが気になる場合は控えるのが良いでしょう。
体を冷やす食材例:スイカ、トマト、ナス、きゅうり、豆腐、白菜、バナナ、梨、そば、緑茶、麦茶、ウーロン茶、プーアル茶など。
体質や季節に合わせて、これらの食材を上手に使い分けることが、関節痛予防や冷え対策に役立ちます。
関節の健康のために摂取したい栄養素
関節の健康のために摂取したい栄養素を多く含む食べ物をまとめたので、献立の参考にしてください。
食事で摂った余分な塩分は尿として排出されますが、ナトリウムと一緒にカルシウムも排出され、骨のもとになるカルシウムが不足します。
高血圧などを予防するためには、1日6g未満が理想とされています。塩分の摂り過ぎには注意が必要です。
タンパク質
筋肉やじん帯を構成し、関節のサポートに重要な役割を果たします。適量のタンパク質摂取は、関節を安定させ、関節の負担を軽減します。
タンパク質を多く含む食べ物:卵や乳製品、豆腐・納豆などの大豆製品、鶏むね肉やささみなど。
カルシウム
骨の強化に不可欠なミネラルで、骨密度を保ち、骨の脆弱化や骨折を防ぎます。丈夫な骨が関節を支えるため、関節の負担軽減にもつながります。
カルシウムを多く含む食べ物:小魚、めざし、桜えび、牛乳、チーズ、ひじき、海藻、ナッツ類など。
ビタミンD
カルシウムの吸収を促進し、骨を丈夫にします。また、免疫機能のサポートにも寄与し、関節の炎症リスクを軽減する効果もあります。
ビタミンDを多く含む食べ物:魚類、キノコ類、卵黄など。
ビタミンK
骨にカルシウムを取り込み、骨密度を高めるために必要なビタミンです。骨の形成を助け、骨折や関節の変形を予防する役割を果たします。
ビタミンKを多く含む食べ物:緑黄色野菜、納豆、ワカメ、海苔、緑茶、青汁など。
関節軟骨を丈夫にする栄養素
関節軟骨を丈夫にする成分を日常的に摂ることで、痛みの緩和や関節の変形予防を意識しましょう。
関節軟骨を丈夫にする栄養素を多く含む食べ物は、次のとおりです。
コンドロイチン
軟骨の弾力性や水分保持をサポートする成分です。軟骨の衝撃吸収力を高め、摩耗を防ぐ効果があり、関節痛の軽減にもつながります。
コンドロイチンを多く含む食べ物:ウナギ、フカヒレ、ヒラメ、鶏の皮、納豆、オクラ、山芋、里芋など。
グルコサミン
軟骨の再生を促進する成分で、軟骨の材料となります。関節軟骨の修復を助け、関節の摩耗や痛みを予防する効果があります。
グルコサミンを多く含む食べ物:ウナギ、干しエビ、イカの軟骨、オクラ、キノコ類など。
オメガ3脂肪酸
抗炎症作用があり、関節の炎症や腫れを軽減します。関節の炎症が続くことで軟骨が損傷するのを防ぐ効果が期待されます。
オメガ3脂肪酸を多く含む食べ物:ウナギ、鮭、ブリ、サバ、イワシ、サンマ、マグロなど。
まとめ
関節痛のなかでも、多くの人が罹患する「変形性膝関節症」をご紹介しました。
変形性膝関節症は中高年女性に多い症状ですが、筋肉量は20代をピークに減少します。
筋力低下を防ぐためには、運動習慣や関節に負担をかけない生活習慣が大切です。
すり減った膝軟骨を丈夫にするために、今回ご紹介した食材を積極的に摂取するとよいでしょう。
毎日の入浴も血行促進に効果的です。
関節痛予防のトレーニングやリハビリは「DSセルリア」で
当社では、訪問看護とリハビリ型デイサービスを提供しています。
「トータルリハセンター(TRC)」では、機能訓練などに加え、摂食・嚥下機能訓練や口腔清掃、口腔機能向上のためのプログラムなど多角的に日常生活動作(ADL)の維持・改善に取り組んでいます。
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