言語障害とは?加齢による言語能力の変化やリハビリ方法を解説

高齢になると、脳の神経細胞の減少や認知機能の低下などにより、言葉を話すことや理解することが難しくなる言語能力の低下が起きる場合があります。言葉が出ない、聞いても理解できないなどコミュニケーションが困難になると、精神的、社会的に孤立してしまうことがあります。

年齢を重ねることで起こる言葉の変化や、会話がうまくいかなくなる背景を知ることは、ご本人だけでなくご家族にとっても大切です。
今回は、高齢者に見られる言語能力の変化とその原因、そして生活の質を保つためのリハビリ方法について解説します。

高齢による言語能力の変化

高齢者の言語能力の変化は、脳の機能の低下や身体的な変化によって起きます。

ここでは、具体的な原因や症状をご紹介します。

高齢による言語能力の変化

言葉の理解や表現に時間がかかるようになる

加齢に伴い、認知機能が低下することで、言語処理能力が低下する傾向があります。そのため、相手の話をすぐに理解するのが難しくなったり、言いたい言葉がすぐに出てこなくなることがあります。

会話のテンポについていけず、話の途中で言葉に詰まるような場面が増えることもあります。

言葉を忘れる、聞き取れない

高齢になると、人や物の名前など言葉を思い出すのに時間がかかったり、言葉を忘れたりします。

また、難聴が原因で小さい声や早口言葉が周囲の音に紛れると、聞き取りが難しくなります。

文法を間違える

文法のルールや構造を正しく理解するのが難しくなり、間違った言い回しをしてしまうことがあります。文法の間違いが増えると、スムーズな会話が難しくなる場合もあります。

言語障害とは

言語障害とは、「声や言葉が出ない」「発音ができない」「言葉の意味が理解できない」など、日常生活のやり取りに支障が生じる状態を指します。

高齢者の言語障害は、加齢に伴う脳の変化や脳卒中(脳梗塞・脳出血・くも膜下出血の総称)・認知症(アルツハイマー型認知症)などが原因で起こることが多いです。また、パーキンソン病や筋萎縮性側索硬化症(ALS)などの神経変性疾患も原因として挙げられます。

これらの病気は、言語理解・表現・記憶・認知機能に影響を与えることがあります。

代表的な言語障害の症状は、構音障害と失語症の2つです。 構音障害と失語症は、症状や治療方法が異なるため、気になる症状などがあれば、病院へ行き診断を受けることをおすすめします。

「声や言葉が出ない」「言葉の意味が理解できない」などの言語障害

構音障害

構音障害とは、言葉を発音するための筋肉の動きに問題があることで「適切な発音がうまくできない障害」のことです。

構音障害は、脳の運動中枢が損傷することで発生します。
具体的には、言葉を発音するために必要な口や舌、喉の筋肉がうまく動かせなくなり、発音が不明瞭になったり、途切れ途切れになったりする状態です。話す力は低下しますが、言葉の意味を理解したり、言葉を使って考えを伝える能力には影響がありません。

構音障害の症状

  • 声が出ない
  • はっきりと発音できない
  • 特定の音(バ行・パ行など)が発音できない
  • ろれつが回らない
  • 舌がもつれる

失語症

失語症とは、脳損傷が原因による「言葉を理解し、使用する能力に問題がある障害」です。

失語症は、脳の言語中枢が損傷することによって起こります。失語症の方は、言葉の理解や使用に障害が生じるため、言葉を正しく使うことが困難になります。これには、言葉を思い出せない、文章を組み立てられない、他人の話が理解できないといった広範な症状が含まれます。

発音そのものに問題があるわけではなく、言葉を「考える力」に影響が出る点が、構音障害との大きな違いです。

失語症の症状

  • 言葉が出てこない
  • 適切な言葉選びができない
  • 言い間違いが多い
  • 文字が読めない、または内容を理解できない
  • 文字が書けない
  • 話の内容を理解できない

言語障害の原因

言語障害の原因は多岐にわたります。主な原因としては、脳卒中・脳腫瘍・外傷性脳損傷といった脳の損傷や、パーキンソン病などの神経変性疾患が挙げられます。

そのほかにも、発達障害・知的障害・聴覚障害・精神疾患、さらにストレスや心的外傷による心因性の言語障害もあります。

特に高齢者の場合、脳卒中や認知症が言語障害の原因として多く見られます。これらは脳に広範な影響を及ぼすため、言語障害に加えて他の症状が現れることもあります。

また、言語障害の症状が突然現れた場合には、脳血管障害の可能性があるため、早急に医療機関を受診することが重要です。

脳の言語中枢

脳卒中による言語障害

脳卒中は、言語障害を引き起こす最も代表的な原因の一つです。
脳の言語をつかさどる領域(ブローカ野やウェルニッケ野など)が損傷を受けることで、「失語症」などの症状が現れます。言葉を話す、理解する、読む、書くといった言語機能に障害が生じることが多く、重症度や症状の出方は脳の損傷部位や範囲によって異なります。

脳卒中による言語障害は突然発症するのが特徴で、発症後すぐにリハビリを開始することで、機能の回復が見込まれる場合があります。特に発症から2週間以内の対応が回復の鍵になると言われています。

認知症による言語障害

言語障害は、認知症の中核症状の一つとしても現れることがあります。
中でも多く見られるのが失語症で、言葉の意味を理解したり、自分の思いを言葉で表現したりする力が、ゆるやかに低下していきます。

そのため、認知症が原因の言語障害は、記憶の低下や判断力の衰えと同時に起こることが多く、日常生活における会話や意思疎通が難しくなるケースも少なくありません。

認知症そのものは完治が難しいとされていますが、適切なリハビリをおこなうことで、言語機能の改善や進行の遅延が期待できます。
特に早期に対応することで、目に見える改善が得られる可能性もあるため、早期発見と対応が重要です。

認知症による言語障害

言語障害の種類

言語障害は、大きく分けて「構音障害」と「失語症」の2つに分類されます。それぞれにいくつかのタイプがあり、症状や原因も異なります。

構音障害

構音障害は、口や舌、声帯など発音に関わる器官や神経・筋肉の異常により、言葉がはっきり発音できなくなる障害です。
脳の損傷や発達上の問題、器官の異常など、原因は多岐にわたります。

機能性構音障害

発声器官や聴力には異常がないにもかかわらず、口や舌の使い方に偏りがあり、特定の音を誤って発音する障害です。
例:「さしすせそ」が「たちつてと」に聞こえる
主に幼児期にみられ、成長とともに自然に改善することがあります。

運動性構音障害

脳卒中・脳外傷・神経疾患などが原因で、発音に関わる筋肉の麻痺や運動制御の障害が起こることで発音が不明瞭になります。
口や舌をうまく動かせず、ゆっくりで聞き取りにくい話し方になることがあります。
先天的な要因によることもあります。

器質性構音障害

口蓋裂、舌小帯短縮症、舌癌の手術後など、発音器官そのものの形態異常や損傷が原因です。

失語症

失語症は、脳卒中や脳外傷、脳腫瘍、認知症などによって脳の言語中枢が損傷されることが原因で起こります。
発話・理解・読み書きなど、すでに獲得した言語機能が部分的または全体的に失われる障害です。

失名詞失語(健忘失語)

言葉の理解や日常会話は比較的保たれていますが、物や人の名前が思い出せず、言葉がすぐに出てこないのが特徴です。
言いたいことがうまくまとまらず、回りくどい表現になることもあります。

伝導失語

話された内容の理解や発話は可能で、スムーズに話すこともできますが、言い間違い(錯語)が多く、自分の誤りに気づいて何度も言い直そうとする傾向があります。(例:「犬」を「ねこ」と言ってしまうなど。)
特に復唱や長い単語の再現が困難で、言葉が途中で詰まるように感じられることがあります。

ブローカ失語(運動性失語)

脳の前頭葉にあるブローカ野の損傷によって起こります。
相手の話は理解できますが、言葉がなかなか出てこず、スムーズに話すことが難しくなります。
発音の誤りや単語の省略も見られます。

ウェルニッケ失語(感覚性失語)

脳の側頭葉にあるウェルニッケ野の損傷が原因で、話す内容はスムーズでも意味が支離滅裂になりやすく、会話が成り立ちにくい状態になります。

全失語

脳の広範な損傷により、「話す」「理解する」「読む」「書く」のすべての言語機能が重度に障害された状態です。
意味のない音を発したり、言葉をほとんど発しない場合もあり、円滑なコミュニケーションがほとんどできなくなることもあります。
多くは右半身麻痺など他の神経症状も伴い、長期的なリハビリが必要です。

それぞれの言語障害には、原因に応じた適切な評価と支援が必要です。早期の診断とリハビリにより、症状の改善やコミュニケーション能力の回復が期待できます。

言語障害のリハビリ

言語障害のリハビリは、生活の質を向上させる役割を果たすものです。一人ひとりの症状や原因に応じたアプローチが大切です。

DSセルリアの訪問看護では、言語聴覚士(ST)が言葉の習得や再学習の指導をおこないます。言語聴覚士とは、病院や施設などで言語やコミュニケーションに関する障害や問題を診断して治療する医療専門職です。また、言語に関する指導だけでなく、食べ物を飲み込むことや食事に関する問題、聴覚障害にも対応しています。

一般的な言語障害のリハビリ内容は、以下のとおりです。

  • コミュニケーションの訓練
  • 音声練習
  • 認知訓練
言語聴覚士(ST)による言語障害のリハビリ

訪問看護のリハビリ

言語障害の特徴と重症度を会話や必要な検査で評価してから、適切なリハビリの計画を立てます。

リハビリでは、言語能力の向上とコミュニケーション能力の回復を目指します。写真・絵・文字・ジェスチャーなど、さまざまな方法を活用して支援します。 また、日常生活での言語支援も重要です。家庭内での会話を増やすことで、リハビリの効果を高めることにつながります。

特に失語症の言語機能の回復訓練では、症状や重さに応じた方法を採用します。
言語理解の訓練には画像や物体を使い、指示に従って物体を選んだり、物体の名前を呼んだりする方法があります。また、発話能力を向上するための発声練習や音の繰り返し練習もあります。口の筋肉を強化する口腔運動もリハビリ方法のひとつです。

DSセルリアでは、ご利用者さまやご家族さまとの対話を通じて、問題解決に向けて支援をします。また、医療専門家や地域社会、同じような悩みを持つ人たちと情報交換や支援をおこなうグループと連携し、さまざまな面からサポートできる体制づくりに努めています。ご利用者さまが自分らしい生活を取り戻し社会復帰できるように、幅広いサポートを提供します。

ご自宅でできるリハビリ

ご自宅の場合、日常生活に取り入れやすいリハビリをおこなうことが重要です。
言語機能の維持・改善には、継続的な刺激が不可欠です。ご自宅でのリハビリは、無理なく続けられる範囲で楽しみながらおこなうことがポイントです。

ご自宅でできるリハビリの内容

  • あいさつや会話を積極的におこなう
  • 音読や朗読に取り組む
  • 好きな歌を歌う
  • 書き取り練習をおこなう
  • 料理をして手や頭を動かす
好きな歌を歌う高齢者

これらの活動は、脳を活性化させ、言葉を思い出す力や発語に必要な筋肉を鍛える効果が期待できます。ご家族や周囲の方とのコミュニケーションを積極的におこない、成功体験を積み重ねることも重要です。
ご自宅でのリハビリは、言語聴覚士による専門的な指導と組み合わせることで、より効果的におこなうことができます。定期的な訪問看護を利用し、専門家のアドバイスを受けながら、継続的にリハビリに取り組みましょう。

言語障害のある方とのコミュニケーションのコツ

焦らず、ゆっくりと話す

言語障害のある方とお話しするときは、焦らず、ゆっくり、気持ちに寄り添うことが大切です。

言いたいことがうまく言えなかったり、聞いたことをすぐに理解するのが難しいこともあります。時間をかけて、丁寧にやりとりすることが大事です。

言語障害のある方とのコミュニケーションのコツ
POINT
1

言葉づかいは普段通りにする

子供に話しかけるような言い方をすると、相手の気持ちを傷つけてしまうことがあります。言葉づかいは普段通りで、相手の“できること”を尊重する気持ちを忘れずに。

POINT
2

相手の言葉を先取りせず、待つ姿勢を大切にする

相手の言いたいことがわかりそうでも、先回りして言ってしまわず、相手が自分の言葉で話すのをゆっくり待ちましょう。うまく伝えられたときの達成感は、本人にとって大きな自信になります。

POINT
3

ジェスチャーやイラスト・写真などを活用する

ジェスチャーを使ったり、イラストや写真を見せて選んでもらったりする「言葉以外の工夫」もとても効果的です。こうした方法を取り入れることで、安心してコミュニケーションができるようになります。

POINT
4

まとめ

これまで、言語障害の症状や原因、加齢による言葉の変化についてご紹介しました。
年齢を重ねることで起こる言葉の変化は、適切な言語トレーニングやリハビリ、そして周囲の方のサポートによって改善が期待できます。

訪問リハビリを利用する際は、訪問看護ステーションに直接申し込みいただけます。訪問看護ステーションはそれぞれ特色や特徴がありますので、ご利用者さまやご家族さまのニーズに合った選択が重要です。

DSセルリアの訪問看護では、言語聴覚士による「訪問リハビリ」を提供しています。言葉を話す、聞くといったコミュニケーションに問題を抱える方に対し、リハビリをはじめ、必要な支援をおこなっています。

一人ひとりに合わせたケアを通じて、ご利用者さまの生活の質の向上に貢献します。

訪問看護や訪問リハビリをお考えなら「DSセルリア」で

「DS訪問看護ステーション」では、病気や障害のある方が住み慣れた地域やご自宅でその人らしい暮らしができるよう、言語聴覚士をはじめ、看護師や理学療法士・作業療法士等がご自宅に訪問して、その人にあった看護やリハビリテーションを提供します。

施設見学・ご相談は随時受け付けております

ご自宅での介護に関してお困りのことがございましたら、どうぞお気軽にお問い合わせください。

DSセルリア株式会社では、東京・千葉エリアにリハビリ型デイサービス「トータルリハセンター」や訪問看護ステーションを設け、地域に根ざした「訪問看護・リハビリテーションサービス」をご提供しています。
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