高齢者の言語障害(失語症)と言語能力の加齢変化に対する適切な対応とリハビリ方法

高齢になると、脳の神経細胞の減少や認知機能の低下などにより、言葉を話すことや理解することが難しくなります。

言葉が出ない、聞いても理解できないなどコミュニケーションが困難になると、精神的、社会的に孤立してしまうことがあります。

高齢者の言語障害の原因を知り、適切な治療やリハビリをおこなうことで症状を改善できる場合があります。
今回は、高齢者の言語障害の症状や原因とリハビリ方法についてご紹介します。

高齢者の言語障害とは

言語障害とは、「声や言葉が出ない」「発音ができない」「言葉の意味が理解できない」など、日常生活のやり取りに支障をきたす状態を指します。

高齢者の言語障害は、加齢に伴う脳の変化や病気が原因で発生します。脳卒中(脳梗塞・脳出血・くも膜下出血の総称)や認知症(アルツハイマー型認知症)などが原因で起こることが多いです。また、パーキンソン病や筋萎縮性側索硬化症(ALS)などの神経変性疾患も原因として挙げられます。
これらの病気が言語理解や表現、記憶、認知機能に影響を与えることがあります。

言語障害の症状

代表的な言語障害の症状は、構音障害と失語症の2つです。

構音障害と失語症の違い

構音障害と失語症はどちらも言語に関連する障害ですが、その原因と症状には明確な違いがあります。

構音障害は、脳の運動中枢が損傷することで発生します。具体的には、言葉を発音するために必要な口や舌、喉の筋肉がうまく動かせなくなり、発音が不明瞭になったり、途切れ途切れになったりする状態です。話す力が低下するものの、言葉の意味を理解したり、言葉を使って考えを伝える能力には影響がありません。

一方、失語症は、脳の言語中枢が損傷することによって起こります。失語症の方は、言葉の理解や使用に障害が生じるため、言葉を正しく使うことが困難になります。これには、言葉を思い出せない、文章を組み立てられない、他人の話が理解できないといった広範な症状が含まれます。
発音そのものに問題があるわけではなく、言葉を「考える力」に影響が出る点が、構音障害との大きな違いです。

つまり、構音障害は「言葉を発音するための筋肉の動きに問題がある」障害であり、失語症は「言葉を理解し、使用する能力に問題がある」障害です。
この違いを理解し、それぞれのご利用者さまに対して適切な対応やリハビリが求められます。

構音障害と失語症は、症状や治療方法が異なるため、正確な診断が重要となります。

構音障害
(適切な発音がうまくできない障害)
失語症
(脳損傷が原因による言語障害)
定義言語を正しく発音できない状態言葉を理解したり、正しく使えない状態
症状言葉の理解はできるが発音が困難、特定の音が出ない、ろれつが回らない など言葉の理解ができない、意味不明な言葉を話す、文字の読み書きができない など
原因パーキンソン病、筋萎縮性側索硬化症、脳卒中 など脳血管障害、脳外傷 など
影響範囲発音と発声に影響を及ぼすが、言葉の理解に影響はない話す、聞く、読む、書くといった言語活動の全般に影響を及ぼす

失語症の原因

言語障害の原因には、病気やけがの後遺症、聴覚障害、発達障害、知的障害、ストレスや心的外傷等による心因性などがあります。
言語障害の一種である失語症の多くは、脳梗塞や脳出血などの脳卒中が原因です。

失語症の種類

失語症のタイプはいくつかに分類されます。ここでは、主な症状の種類をご紹介します。

失名詞失語(健忘失語)

比較的軽い失語症です。言葉の理解や会話に大きな問題はありませんが、人や物の名前を思い出すのに苦労します。また、伝えたいことを伝えるのに時間がかかり、まわりくどい言い方になることがあります。

伝導失語

言葉の内容を理解し、会話をすることができますが、自分の言葉の間違いに気付くと、何度も言い直して訂正しながら正しい言葉を使おうとします。
何度も言い直しや読み直しがあると、吃音(きつおん)のような話し方になります。同じ言葉を繰り返すことがうまくできません。

ブローカ失語(運動性失語)

相手の話を理解する能力は比較的高いですが、なめらかに話すことが難しいです。話そうとしてもうまく言葉が出てこなかったり発音を間違えたりします。

他にも以下の症状もあります。

  • 正しい発話のリズムや強弱を失い、言葉の響きが変わる
  • 相手と同じ言葉やフレーズを繰り返せない
  • 漢字よりも仮名を書くのが難しく、書き間違いが多い
  • 漢字の意味は理解できるが、仮名文字だけだと理解できない

ウェルニッケ失語(感覚性失語)

すらすらと話せますが、内容が支離滅裂で言い間違いが多いため、会話が成り立たないという特徴があります。
会話を聞いて理解するのも難しい状態です。ジェスチャーをしながら、ゆっくり話すと、理解しやすくなります。しかし、書く場合は誤字が多く理解が難しいことがあります。

全失語

最も深刻な失語症です。話す、聞く、読む、書くといったすべての言語機能に障害があります。
状況の理解はできることがありますが、意味のある言葉を話すことや読み書きが難しいです。まったく話せなかったり無意味な言葉を発したりします。
そのため、コミュニケーションがうまく取れません。全失語は、右半身の麻痺が見られることが多く、長期的なリハビリが必要です。

高齢による言語能力の変化

高齢者の言語能力の変化は、脳の機能の低下や身体的な変化によって引き起こされます。
ここでは、具体的な原因や症状をご紹介します。

言葉の選択が難しい

加齢に伴い、認知機能が低下することで、言語処理能力が低下する傾向があります。そのため、新しい言葉を覚えることや正しい言葉の選択が難しくなります。

言語の処理が遅い

言語の処理速度が遅くなり、言葉の理解や会話の速度が低下します。記憶や物事の処理が遅いと、コミュニケーションがうまく取れなくなる可能性があるので注意が必要です。

言葉を忘れる、聞き取れない

高齢になると、人や物の名前など言葉を思い出すのに時間がかかったり、言葉を忘れたりします。
また、難聴が原因で小さい声や早口などの言葉が聞こえづらくなります。特に、言葉が周囲の音に紛れると、聞き取りが難しくなります。

文法を間違える

文法のルールや構造を正しく理解するのが難しくなり、誤った文章を作成します。文法を間違えることが増えると、会話が成り立たなくなります。

このように加齢が原因で変化した言語能力は、適切な言語トレーニングやリハビリをしたり、ご家族さまや介護者などがコミュニケーションを助けたりすることで、高齢者の生活をサポートすることができます。

言語障害のリハビリ

言語障害のリハビリは、生活の質を向上させる役割を果たすものです。一人ひとりの症状や原因に応じたアプローチが大切です。

言語聴覚士(ST)が言葉の習得や再学習の指導をおこないます。言語聴覚士とは、病院や施設などで言語やコミュニケーションに関する障害や問題を診断して治療する医療専門職です。また、言語に関する指導だけでなく、摂食や嚥下に関する問題や聴覚障害にも対応しています。

一般的な言語障害のリハビリ内容は、以下のとおりです。

  • コミュニケーションの訓練
  • 音声練習
  • 認知訓練

言語障害の特徴と重症度を会話や必要な検査で評価してから、適切なリハビリの計画を立てます。
リハビリでは、言語能力の向上とコミュニケーション能力の回復を目指します。写真・絵・文字・身振りなど、さまざまな方法を活用して支援します。
また、日常生活での言語支援も重要です。家庭内での会話を増やすことで、リハビリの効果を高めることにつながります。

特に失語症の言語機能の回復訓練では、症状や重さに応じた方法を採用します。
言語理解の訓練には画像や物体を使い、指示に従って物体を選んだり、物体の名前を呼んだりする方法があります。また、発話能力を向上するための発声練習や音の繰り返し練習もあります。口の筋肉を強化する口腔運動もリハビリ方法のひとつです。

ご利用者さまやご家族さまとの対話を通じて、問題解決に向けて支援をします。また、医療専門家や地域社会、似た問題を抱える人々と情報交換や支援をおこなうグループと連携するなど、総合的な援助体制の構築に取り組みます。 ご利用者さまが自分らしい生活を取り戻し社会復帰できるように、幅広いサポートを提供します。

まとめ

言語障害の症状や原因、言語能力の加齢変化について、ご紹介しました。

セルリアの訪問看護では、言語聴覚士による「訪問リハビリ」を提供しています。言葉を話す、聞くといったコミュニケーションに問題を抱える方に対し、練習やリハビリといった治療、支援、指導をおこなっています。

一人ひとりに合わせたケアを通じて、ご利用者さまの生活の質の向上に貢献します。

訪問リハビリを利用する際は、訪問看護ステーションに直接申し込むことも可能です。訪問看護ステーションはそれぞれ特色や特徴がありますので、ご利用者さまやご家族さまのニーズに合った選択が重要です。

訪問看護や訪問リハビリをお考えなら「DSセルリア」で

「DS訪問看護ステーション」では、病気や障害のある方が住み慣れた地域やご自宅でその人らしい暮らしができるよう、言語聴覚士をはじめ、看護師や理学療法士・作業療法士等がご自宅に訪問して、その人にあった看護やリハビリテーションを提供します。

施設見学・ご相談は随時受け付けております

ご自宅での介護に関してお困りのことがございましたら、どうぞお気軽にお問い合わせください。

DSセルリア株式会社では、東京・千葉エリアにリハビリ型デイサービス「トータルリハセンター」や訪問看護ステーションを設け、地域に根ざした「訪問看護・リハビリテーションサービス」をご提供しています。
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