【高齢者の転倒予防】原因と自宅でできる簡単トレーニング

わずかな段差でのつまずきや転倒の頻度が増えたと感じることはありませんか?
加齢や運動不足などが原因となり、膝関節の動きが鈍くなると転倒しやすくなります。高齢者の場合、転倒が原因で重症化したり、寝たきりになるリスクもあります。
今回は、高齢者の転倒を防ぐために、転倒の主な原因や自宅で簡単にできるトレーニング方法をご紹介します。
目次
高齢者が転倒する原因
高齢になり転倒する回数が増えるのは、環境などの外的要因と身体的な内的要因が関係しています。
転倒を引き起こす外的要因
高齢者はわずかな段差でも、つまずいて転倒することがあります。転倒の原因となる外的要因をできる限り排除して、転倒予防を心掛けましょう。
- 階段や段差
- 滑りやすい場所
- 足元が暗い場所
- 手すりのない生活スペース
- 障害物(カーペットやコードなど)
- 足に合っていない履物

転倒を引き起こす内的要因
加齢による身体機能の変化や疾患による身体症状など、内的要因による転倒も考えられます。転倒の原因は人によって異なるため、特徴を把握し、原因に合わせた転倒予防に努めることが大切です。
また、転倒リスクを高めてしまう薬もあります。特に睡眠薬・抗不安薬・抗精神病薬に加え、抗ヒスタミン薬・抗てんかん薬・利尿薬・抗パーキンソン病薬などが挙げられます。
加齢による要因
- 筋力の低下
- 姿勢の変化
- 姿勢反射の低下
- バランス感覚の低下
- 運動速度の低下
身体的な要因
- 認知症
- 起立性低血圧
- 不整脈
- 脳血管障害
- 変形性関節症
- 変形性脊椎症
- 骨粗鬆症
転倒しやすい高齢者の特徴
高齢になると、思わぬ動作が転倒のきっかけになることがあります。
以下の項目は、厚生労働省が公開している「転倒等リスク評価セルフチェック票」に基づいた内容です。複数項目に該当する方は、環境整備や筋力トレーニングなどによる早めの転倒予防が大切です。
- 過去1年以内に転んだことがある
- 最近、つまずいたり、滑ったり、転びそうになったことがある
- 椅子から立ち上がるときに、手すりや家具につかまらないと立てない
- 片足で立って靴下が履けない
- 階段を手すりにつかまらずに上り下りできない
- 杖や歩行器などを使っている
- 最近、歩くのが遅くなったと感じる
- 立ちくらみやふらつきを感じることがある
- 視力が低下していると感じる
- 薬を5種類以上服用している
- 外出するのがおっくうに感じるようになった
- 転倒への不安を感じている

高齢者が転倒するリスクとその影響
65歳以上の10%から20%に転倒が見られると報告されています。年齢が上がるほど転倒事故の割合が高くなり、85歳以上では19.4%と、約5人に1人が転倒していることになります。
[参考]内閣府「平成22年度 高齢者の住宅と生活環境に関する意識調査結果:転倒事故」

転倒による主な外傷と骨折部位
高齢者が転倒すると、骨折や脳内出血、頭部挫傷など重大な外傷につながる可能性が高いです。
特に、高齢者は骨が弱くなっていることが多いため、容易に骨折を起こしやすくなっています。消費者庁のデータによると、骨折した高齢者の76%が入院となるため、十分な注意が必要です。
高齢者が転倒した際によくみられる骨折の部位は、以下の4つです。
- 大腿骨近位部の骨折:脚の付け根・股関節の骨折
- 脊椎圧迫骨折:背骨の骨折
- 上腕骨近位端骨折:腕の付け根の骨折
- 前腕骨遠位端骨折:手首の骨折

転倒がADLに与える影響
ADL(Activities of Daily Living)とは「日常生活動作」のことで、移動・排泄・食事・更衣・洗面・入浴といった、個人が日常生活を維持するために最低限必要な活動を指します。
高齢者が転倒し、骨折やケガを負ってしまうと、生活動作全体に大きな支障をきたします。特に、長期安静状態になるとADL低下の恐れがあります。このADLが低下すると、たとえリハビリで歩けるようになったとしても転倒前の身体能力には戻らないこともあるため、転倒予防に努めることが重要です。
▼ADL(日常生活動作)低下を予防するポイントなどは以下の記事で紹介しています。
また、一度転倒すると、歩くことへの恐怖心や不安感を強く感じることも少なくありません。
恐怖心から歩くのをためらったり、運動を避けたりするようになるとADLが低下し、廃用症候群を引き起こしやすくなります。このような悪循環により、身体機能の低下を招き、さらに転倒リスクが高まります。
転倒リスクはご自身だけの問題とするのではなく、家族やケアマネジャー、看護・介護職員などの介護者同士で共有して、転倒予防に努めることが大切です。
廃用症候群とは?
廃用症候群は、寝たきりに近い状態で、加齢や疾患などによる活動の低下や過度の安静から生じる、身体的・精神的諸症状の総称です。主な症状としては、筋萎縮・誤嚥性肺炎・起立性低血圧・床ずれ・うつ状態・見当識障害が挙げられます。
寝たきりや歩行障害などのリスク軽減のためにも、高齢者の転倒予防は家族や周囲の介護者全員で気を配ることが大切です。
高齢者の自宅でできる転倒防止の工夫
高齢者の転倒事故が多い場所
高齢者の転倒事故は自宅での発生が最も多く、全体の48%を占めるとされています。
以下は、高齢者(65歳以上)の転倒事故が多い自宅の場所の一部例と事故状況です。

場所 | 割合 | 事故状況(の一例) |
---|---|---|
居室 | 45% | ・こたつ布団やカーペット、コードに足が引っかかり転倒 ・部屋と廊下の段差につまずいて転倒 ・ベッドから転落 など |
階段 | 18.7% | ・スリッパが脱げてバランスを崩したり、滑ったりして転倒 ・暗闇で足元がよく見えず階段を踏み外して転落 など |
台所・食堂 | 17% | ・吊り棚から荷物を取るときに踏み台から転倒 ・キッチンマットにつまずいて転倒 ・濡れた床にスリッパが滑って転倒 など |
玄関 | 5.2% | ・段差や玄関マットにつまずいて転倒 ・靴を履いたり脱ぐ際にバランスを崩して転倒 など |
自宅でできる転倒防止対策
高齢者の転倒原因として特に多いのは、段差によるつまずきです。
スロープの設置や床のかさ上げなどで段差を解消し、階段や廊下に常夜灯を設置して夜間でも足元を見えやすいように整えましょう。
ご自身やご家族、介護者は以下の対策をとって転倒予防を意識してください。
- 使用頻度が高いものは、手の届きやすい場所に置く
- 高い場所にあるものを減らし、踏み台は使わない
- ベッドからの転落防止のためにベッドガードを設置する
- 動線を意識したコードの配置をする
- 浴室で石鹸やシャンプーの使用後に床を洗い流す
- 台所の床は水滴などで滑らないよう拭き掃除を徹底する

転倒防止のためのトレーニング
転倒を防ぐには、特に下半身の筋力強化が重要です。立つ・座る・歩くといった基本的な動作を安定しておこなうためにも日頃から、体幹の筋力トレーニングや体操を積極的におこないましょう。
転倒予防に重要な6つの筋肉
下半身には多くの筋肉がありますが、なかでも重要な筋肉は次の6つです。
- 前脛骨筋(脛の筋肉):つま先を上げる動作を助ける
- 下腿三頭筋(ふくらはぎの筋肉):歩行時の踏み出しを支える
- ハムストリングス(太ももの後ろの筋肉):姿勢保持や歩行時のバランスに関わる
- 大腿四頭筋(太ももの前の筋肉):立ち上がりや階段昇降に関わる
- 大殿筋(お尻の筋肉):体をまっすぐ支える
- 中殿筋(お尻の横の筋肉):片足立ちの安定に関わる
また、下半身の筋力強化に加えて上半身の筋肉も鍛えることで、歩行時にしっかり腕を振れるようになります。
腕を振って歩くとバランスをとりやすくなるだけでなく、全身の血流が促進され、脳の疲労回復も促します。バランス力、筋力などの運動機能の低下は、すぐに回復するのは難しく、継続的なトレーニングをおこなうことが大切です。

自宅で簡単に転倒防止トレーニング
転倒予防には、筋力トレーニングに併せてバランス感覚を養う体操をおこなうことで、より高い効果を得られます。転倒予防に必要な「バランス感覚」を養う体操やトレーニングをご紹介します。
転倒予防【バランス向上のトレーニング】
転倒を予防する【座位のストレッチ】
この他に、ウォーキングや屋外での運動もおすすめです。しかし急に運動をすると思わぬケガをしてしまうこともあるため、運動をする前には軽い体操などをしておくと打ち身や捻挫などの予防になります。
また、ご自宅での体操やトレーニングも大切ですが、ご自身や家族だけでは介護が難しい場合もあります。その際は専門施設の利用も検討しましょう。
例えば、DSセルリアが提供するトータルリハセンターでは、歩行のための筋力向上などを図るマシントレーニングなどもおこなっています。ご興味がある方は一度ご相談ください。
お気軽にお問い合わせください。043-273-5024営業時間 9:30-18:30 [ 土日・祝日除く ]
お問い合わせ・資料請求 お気軽にお問い合わせください。高齢者の転倒予防について
高齢者の転倒予防として、転倒する原因と対策をご紹介しました。
転倒予防は、介護者などの協力により防げるものや、トレーニングによる筋力向上などで予防できるものがあります。なによりも、予防に関する知識を得ること、ご自身の転倒リスクを知ること、転倒しやすそうな場所を改善することが重要です。
筋力トレーニングや体操を習慣化し、転ばない身体づくりを目指しましょう。
転倒予防のための筋力トレーニングは「DSセルリア」
当社では、訪問看護とリハビリ型デイサービスを提供しています。
「トータルリハセンター(TRC)」では、マシンを使った機能訓練などに加え、摂食・嚥下機能訓練や口腔清掃、口腔機能向上のためのプログラムなど多角的に日常生活動作(ADL)の維持・改善に取り組んでいます。
「DS訪問看護ステーション」では、病気や障害のある方が住み慣れた地域やご自宅でその人らしい暮らしができるよう、看護師や理学療法士・作業療法士などがご自宅に訪問して、その人にあった看護やリハビリテーションを提供します。
施設見学・ご相談は随時受け付けております
ご自宅での介護に関してお困りのことがございましたら、どうぞお気軽にお問い合わせください。
DSセルリア株式会社では、東京・千葉エリアにリハビリ型デイサービス「トータルリハセンター」や訪問看護ステーションを設け、地域に根ざした「訪問看護・リハビリテーションサービス」を提供しています。
また介護従事職にご興味のある方も、お気軽にお問い合わせください。