高齢者の食事で気を付けることとは?介助のポイントと注意点も解説
高齢者の食事には、特有の注意点があります。
加齢とともに噛む力や飲み込む力、味覚が低下するため、適切な食事量や不足しがちな栄養にも気を配ることが重要です。
今回は、高齢者の食事で気を付けるべきことや介助のポイントをご紹介します。
目次
高齢者の食事の特徴
高齢になると消化器官の機能が低下し、一度にたくさんのものを食べれなくなります。そのため、食事内容はタンパク質・ビタミン・ミネラル・食物繊維・カルシウムなどの栄養バランスに留意しましょう。
また、脱水症状になりやすい高齢者は、水分摂取の促進も必要です。
水分補給のために、水や無糖の飲料を常時摂取できるようにしましょう。
誤嚥や窒息のリスクが高い高齢者の食事は、安全性に配慮し、噛みやすさや飲み込みやすさなど、調理にも工夫が必要です。
高齢者の食事に関連する機能低下
人は誰でも、加齢による身体機能の衰えを感じるものです。
食事摂取にかかわる3つの機能低下について解説します。
1. 噛む力(咀嚼力)の低下
高齢になると、筋力低下に伴なって食べ物を噛む力が弱まります。
この口の機能が衰えることを「オーラルフレイル」と呼びます。
特に「噛む力」が衰えている方は、首や口周りの筋力が弱くなっていたり、固まっていたりする可能性が高いです。
歯の数の減少や義歯の使用でも噛む力は低下します。
厚生労働省のデータ(歯の健康)によると、50歳以降では平均して2年に1本強の歯を喪失しており、80歳以上で20本の歯を保有している割合は、51.6%です。
噛む力の低下は食べ物をのどに詰まらせるリスクを高め、命を危険にさらすことも少なくありません。
また、噛む力が弱まって噛む回数が減少すると、脳への血流が低下して老化が加速する要因となり、認知症のリスクも増加します。
2. 飲み込む力(嚥下)の低下
高齢者が食事中にむせやすくなるのは、飲み込む力の衰えが主な原因です。
むせは、食べ物や水が気道に入りかけたときの防御反応で、健康な人であれば自然に起こる反応です。
異物が誤って気道に入りそうなときに適切にむせが起こらないと、肺炎や窒息などの危険が生じます。
高齢者によくみられる口腔機能の低下による嚥下困難は、筋肉の衰えなどで食べ物が飲み込みづらくなる状態です。
嚥下困難があると、食事が摂りづらくなったり、むせたりすることがあります。
特に、水は食べ物よりも速いスピードでのどを通るため、のどの筋肉の反応が追いつかず、上手に飲み込めずにむせるケースがよくあります。
3. 味覚の低下
加齢によって口腔内の味蕾(みらい)の働きが鈍くなると、食べ物の味を鮮明に感じにくくなります。
味蕾は舌や粘膜に存在する味覚を感知する細胞の集合体で、食べ物や飲み物が口腔内に入ってくると、化学物質に反応して味を感知します。
一般的に、味蕾は以下5つの主要な味覚を感知します。
- 甘味
- 塩味
- 酸味
- 苦味
- うま味
味覚が感じにくくなる原因として挙げられるのは、細胞自体の老化や損傷、加齢に伴う唾液の分泌量の減少から生じるドライマウスです。
慢性的な疾病や多くの薬を服用することが一般的な高齢者は、これらの疾病や薬の副作用で味覚に影響を受けることもあります。
高齢者の食事で注意するポイント
機能低下を考慮した、高齢者の食事で注意するポイントをみていきましょう。
噛みやすさ
蒸し野菜・煮物・ゆでた魚・肉など、やわらかくて噛みやすい食材を選ぶことが重要です。
食材を細かく刻んだり、裏ごししたりすることで、咀嚼が容易になるでしょう。
片栗粉・コーンスターチ・とろみ剤などでとろみをつけると、食べ物が口腔内でより滑らかになり、噛みやすくなります。
温かい食事は口腔内でやわらかくなり噛みやすくなるため、食事の温度も噛みやすさに影響を与えます。
口腔内の感覚が鈍くなっている場合は、火傷のリスクを考え適切な温度に調整することがポイントです。
飲み込みやすさ
飲み物やスープなどにとろみをつけることで液体がのどに流れる速さがゆっくりになり、誤嚥のリスクが軽減され、飲み込みづらさを改善できます。
ただし、とろみの濃度が濃すぎると、かえって飲み込みにくくなってしまったりするため、個人に合わせて濃度を調整することが重要です。
味覚低下への配慮
味覚障害によって食事の楽しみを奪われると、QOL(生活の質)は著しく低下します。
新鮮で良質な食材を用い、適度な調味料や香辛料を使うことで食事の味を向上させましょう。
野菜や果物などの生の食材は味や風味が豊かで、高齢者の味覚を刺激する効果があります。
また、食事の見た目は味覚に影響を与えます。
多様な食材を取り入れ、彩り豊かに盛り付けた料理は食欲をそそり、満足感にもつながります。
高齢者の適切な食事
高齢者の適切な食事についてみていきましょう。
必要な食事量
個々の身体活動レベルや体格、健康状態によって調整する必要があります。
詳しくは、厚生労働省「日本人の食事摂取基準(2020年版)」でご確認ください。
必要な栄養・不足しがちな栄養
必要な栄養をバランスよく摂取することが重要です。
冷凍食品やインスタント食品、菓子パンなど手軽に食べられる食事が多くなると、以下の栄養素が不足しがちになります。
- タンパク質
- ビタミン
- ミネラル
- 食物繊維
不足する栄養素を補うためには、食生活で心掛けるほか、医師や栄養士への相談を経て適切な栄養補助食品を選ぶことも大切です。
炭水化物に偏らず、食物繊維が豊富な野菜・果物の積極的な摂取がポイントのひとつです。
また、筋肉量の低下が進む高齢者にとって重要な栄養素はタンパク質です。肉・魚・卵・乳製品・大豆製品などから適切な量のタンパク質を摂取しましょう。
心臓血管の健康維持には適度な脂質、免疫機能の維持や骨の健康に欠かせないのはビタミン・ミネラルです。
高齢者に多くみられる味覚障害の一因である亜鉛不足は、牡蠣・うなぎ・ごま・海藻・大豆・卵黄・アーモンドなどで補えます。
食事介助の手順とポイント
一般的な高齢者の食事介助の手順とポイントは、以下の通りです。
食べる人の好みや制限事項に基づいて、食事を準備する
【Point】
必要に応じて、食材を刻んだりやわらかくしたりして、食べやすくする。
高齢者が座って食事を摂りやすいよう、適切な椅子やテーブルの高さを調整する
【Point】
姿勢が悪いと、むせたり誤嚥のリスクが高まるため、最適な姿勢は背中が60〜90°の角度に保たれ、顎が引き気味になっている状態にする。
食事を食べやすい位置に置く
【Point】
箸の使用が難しければ、必要に応じてスプーンやフォークを使用する。
熱い食事や飲み物は、高齢者が火傷しないよう注意する。
唾液の分泌量が少ない高齢者のため、水分の多い料理から提供する
【Point】
自分で食べることが困難な場合は、サポートする。
高齢者のペースに合わせて、急かさずにゆっくりと食べることを促す
【Point】
必要に応じて、口の周りを拭いたり水分補給を促します。
コミュニケーションを取りながら食事を摂る
【Point】
食事中に会話を楽しむことも大切。
誤嚥のリスクがあるため、声を掛けるタイミングには気を付ける。
まとめ
高齢者の食事で気を付けるポイントなどについてをお伝えしました。
介助する高齢者の身体的特徴や嗜好を把握して、安全に楽しく食事ができるよう配慮しましょう。
高齢者の栄養管理は、疾病や加齢に伴う口腔機能の衰え、独居や認知機能障害などの要因が入り混じり、難しくなります。
普段の食事だけでは栄養が不足しがちなため、食材の選び方や調理方法に工夫が必要です。
また、誤嚥性肺炎の予防のために、口腔ケアも取り入れましょう。
デイサービスや訪問看護師のアドバイスも活用してください。
食事介助では適切な姿勢や提供方法に配慮し、食事を安心して楽しめる環境を整えることが大切です。
オーラルフレイルの予防・改善は「DSセルリア」で
当社では、訪問看護とリハビリ型デイサービスを提供しています。
「トータルリハセンター(TRC)」では、機能訓練などに加え、摂食・嚥下機能訓練や口腔清掃、口腔機能向上のためのプログラムをおこない、食べることに関するリハビリにおいても力を入れています。
「DS訪問看護ステーション」では、病気や障害のある方が住み慣れた地域やご自宅でその人らしい暮らしができるよう、看護師や理学療法士・作業療法士などがご自宅に訪問して、その人にあった看護やリハビリテーションを提供します。
施設見学・ご相談は随時受け付けております
ご自宅での介護に関してお困りのことがございましたら、どうぞお気軽にお問い合わせください。
DSセルリア株式会社では、東京・千葉エリアにリハビリ型デイサービス「トータルリハセンター」や訪問看護ステーションを設け、地域に根ざした「訪問看護・リハビリテーションサービス」を提供しています。
また介護従事職にご興味のある方も、お気軽にお問い合わせください。