夏バテの原因と予防のための食事と生活習慣

高齢者 夏バテ

夏の暑さは、高齢者の体力を消耗し疲れや倦怠感、食欲不振といった体調不良を引き起こす一因となります。
高齢者ご自身も周囲の方も、夏バテは気付きにくく、適切な対処のために特徴を見逃さないように意識することが重要です。

今回は、高齢者の夏バテの特徴や予防のための食事と生活習慣などをご紹介します。

高齢者の夏バテはなぜ起こるのか?

高齢者が夏バテを起こしやすい主な原因は、次のとおりです。

水分不足

水分不足は、高齢者が夏バテになる原因のひとつです。高齢者は若い人に比べて体内の水分保持能力が低下しているため、体内の水分が不足しやすく、暑い季節に適切な水分補給を怠ると、脱水症状が起こりやすくなります。

体内の水分バランスが乱れて血液中の水分量が減少すると、血液の循環が悪化し、体温の調節が妨げられます。その結果、夏バテや熱中症などのリスクにつながります。

夏バテ

栄養不足

高齢者は食欲が低下しやすく、消化や吸収能力が衰えるため、栄養の摂取が難しくなりがちです。

栄養不足によって身体の免疫力が低下し、体力の低下や疲労が感じやすくなるほか、筋肉量が減少して身体の動きが鈍化します。その結果、高齢者は暑い季節になると体力を消耗しやすく、夏バテになりやすいです。
さらに、栄養不足で栄養バランスが崩れると、代謝や体温調節がうまくおこなわれません。特にたんぱく質やビタミン、ミネラルの不足は免疫力や筋力の低下を招き、夏バテのリスクを高めます。

体温調節機能の低下

高齢者は加齢に伴って体温調節が難しくなり、暑さに適応する能力が弱まります。これは、汗をかく量や血管の拡張・収縮などの生理的なメカニズムが低下するためです。

その結果、高齢者は暑い季節になると体温上昇に対する耐性が低くなり、外部の環境に適応するのが難しくなります。

体温調節機能低下

なぜ高齢者の夏バテは気付きにくい?

高齢者の夏バテが見逃されやすい理由のひとつは、夏バテの症状が他の健康問題と混同されやすいことが挙げられます。たとえば、疲労感やめまいは別の疾患や不調と似ているため、夏バテであると気付きにくいです。

また、高齢者は自身の健康状態を見過ごしてしまう傾向があり、夏バテの症状を適切に認識できないことがあります。

高齢者の夏バテの特徴

高齢者の夏バテの特徴には、以下が挙げられます。

  • 食欲不振:食欲がない、十分な栄養を摂取できない。
  • 睡眠障害:寝つきが悪い、夜中に目が覚めやすい。
  • 倦怠感:ぼんやりする、やる気が出ない状態が続く。
  • 体温調節の異常:汗の量が通常よりも少ないまたは多い、体が熱っぽい感じがするなどの症状が現れる。
  • めまいや立ちくらみ:体が不安定で、めまいや立ちくらみが起こる。

これらの症状が高齢者に見られる場合は、夏バテの可能性が高いでしょう。高齢者は体力が低下しやすいため、早めに対処することが重要です。

倦怠感

熱中症との違い

夏バテと似た症状として、熱中症が挙げられます。

夏バテ熱中症
原因暑さや湿度による体力の消耗や、栄養不足、水分不足など。長時間の強い日差しや高温・多湿の環境下での過度な運動や活動、水分不足など。
症状疲労感や倦怠感、食欲不振、めまいなど。
体力の低下や活動量が減少する。
初期症状は、頭痛、めまい、吐き気、倦怠感、顔や体のほてり、悪心など。
進行すると、高熱、意識障害、けいれん、血圧低下、脱水症状など熱中症が重篤化する。

夏バテを予防する方法

高齢者の夏バテ予防には、食事の工夫と生活習慣の改善が効果的です。

夏バテを予防する食事のポイント

高齢者の夏バテを予防するには、食事の工夫が大切です。夏バテ予防に効果のある以下の栄養素を積極的に摂取しましょう。

たんぱく質は、筋肉や免疫機能を維持するための重要な栄養素です。
肉や魚、卵、大豆製品などの動物性たんぱく質と植物性たんぱく質の両方から、多様な食材をバランス良く組み合わせて摂取するようにしましょう。

クエン酸は、唾液と胃液の分泌を促進し食欲を増進させます。また、疲労の原因である乳酸の分解を助ける効果もあります。
クエン酸が含まれているレモンや梅干しを摂取すると、疲労回復に役立つでしょう。

ビタミンやミネラルは、エネルギー代謝に必要な栄養素です。暑い季節は体温調節のためにエネルギーが消費されやすいため、十分なビタミンやミネラルを摂取することで、疲労感や倦怠感を軽減することができます。
フルーツにはビタミンやミネラル、食物繊維など豊富な栄養素が含まれているので、積極的に摂取しましょう。

夏バテを予防する生活習慣

高齢者の夏バテを予防するためには、生活習慣を整えることも大切です。
以下に、具体的な方法をご紹介します。

適切な水分補給

高齢者は水分を失いやすいため、こまめな水分補給が必要です。水分補給には食事を活用するとよいでしょう。水分量の多いスープやシチューなどの料理を食事に取り入れることにより、水分を摂取しやすくなります。
嚥下機能が低下してむせやすい場合は、調理法を工夫して飲み込みやすくすることも大切です。。

ただし、嚥下機能が低下していると飲み込みが難しくてむせてしまいます。とろみ剤を利用するなど工夫をして水分を摂りやすくしましょう。

予防

適度な運動

適度な運動は、体力を維持し免疫力を高める助けになります。日常的に散歩やストレッチなど軽い運動を取り入れるようにすると、体力の低下を防げるでしょう。ただし、暑い時間帯や高温多湿の日は避けて、適切なタイミングでおこなってください。

適度な運動
予防

栄養バランスの良い食事

栄養バランスの良い食事は、免疫力と体力を維持します。野菜やフルーツ、たんぱく質を豊富に含む食材をバランス良く摂取しましょう。

予防

涼しい環境の確保

高齢者は体温調節機能が低下しているため、適切な室温や風通しの良い環境を確保する必要があります。暑さを避けるために、エアコンや扇風機を適切に使用して室内の温度を調整しましょう。

環境
予防

十分な睡眠

十分な睡眠には、免疫力向上や体力回復といった重要な役割があります。夜の睡眠だけでなく、30分程度の昼寝をすることも効果的です。ただし、長時間の昼寝は夜の睡眠リズムを乱す可能性があるため、睡眠時間をとるようにしましょう。

これらの生活習慣を実践することで、高齢者の夏バテを予防し、健康の維持につなげることができます。

予防

まとめ

高齢者の夏バテは、適切な食事と生活習慣の改善で予防できます。
水分補給や栄養摂取に気を付けながら、涼しい場所で適度な運動と十分な休息を心掛けて、夏バテを防ぎましょう。

訪問看護やトータルリハセンターでは、体調の確認や運動、夏バテ予防のアドバイスなどをおこなっていますのでぜひご利用ください。
高齢者が健康に夏を過ごせるよう、夏バテ対策を実践しましょう。

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