【高齢者の口腔ケア】入れ歯の正しいお手入れ方法

毎日の食事や会話を楽しむために欠かせない入れ歯ですが、正しいお手入れ方法をご存じでしょうか?
正しい入れ歯のお手入れ方法を知っていると、入れ歯の寿命や口腔の健康に大きな差が生まれます。
今回は、入れ歯の正しいお手入れ方法をわかりやすくご紹介します。正しいお手入れができているか不安な方は、ぜひ参考にしてください。

入れ歯のお手入れをしないとどうなる?
入れ歯のお手入れを怠ると、以下のようなトラブルが起きやすくなります。
- 口臭
- 口内炎
- 歯周病
- むし歯
- 入れ歯の変色や変形
- 感染症

入れ歯のお手入れが不十分だと、入れ歯に食べカスや細菌が付着し、不快な口臭の原因となります。
また、入れ歯表面のバイオフィルム(細菌の膜)を放置すると、口内炎や歯周病の原因になるため注意が必要です。特に、高齢者は免疫力が低下していることもあり、口腔内の細菌が肺炎などの全身疾患へつながるリスクもあります。
こうしたリスクを防ぐためにも、毎日の適切な入れ歯のお手入れが欠かせません。
入れ歯の4つのお手入れ方法
入れ歯の基本的なお手入れ方法は4つです。
毎食後の洗浄
食事をしたあとは、すぐに入れ歯を洗浄することがお手入れの基本です。毎食後すぐに入れ歯を外し、流水でさっと洗い流し、入れ歯専用ブラシなどを使用して、表面に付着した汚れを丁寧に落とします。

普通の歯ブラシは硬すぎるため、入れ歯の表面を傷付ける恐れがあります。歯の部分は専用ブラシで磨き、歯ぐきにあたる柔らかい部分は、柔らかめのスポンジやガーゼで優しく洗いましょう。
部分入れ歯のクラスプ(残存歯に掛けて入れ歯を固定する金具)などは、特に食べカスなどの汚れが残りやすいため丁寧に洗浄することが大切です。
就寝前は洗浄剤で浸け置き洗浄
専用ブラシだけでは入れ歯の歯の部分は汚れや細菌が残りやすいため、就寝前のお手入れは入れ歯洗浄剤を使って浸け置き洗浄することをおすすめします。浸け置き洗浄により、汚れや細菌の除去が可能です。
浸け置きしすぎると入れ歯が痛んだり、総入れ歯と部分入れ歯では使用できる洗浄剤が異なる場合があります。そのため、入れ歯洗浄剤は説明書の使用時間や使用方法を守り、可能であれば毎日おこないましょう。

超音波洗浄器での隙間汚れ除去
よりきれいに洗浄するためには、入れ歯用超音波洗浄器の利用も効果的です。
超音波で液体を振動させることで気泡が発生し、気泡が破裂するときの衝撃で入れ歯の細部の汚れを落とすことができます。特に、複雑な形状の入れ歯におすすめです。
歯科医院での定期クリーニング
自宅での入れ歯のお手入れや、残っている歯のケアも大切ですが、特に残存歯がある場合は、定期的に歯科医院での専門的なクリーニングを受けることが最も重要です。プロの手によるクリーニングは、自宅では落としきれない汚れも徹底的に除去できます。
また、歯科医院では入れ歯の調整やメンテナンスも可能なため、ゆがみや破損にいち早く対応できます。口腔内に汚れや細菌が残っていると、残存歯がむし歯になるリスクもあるため、定期的に歯科医院でチェックしましょう。
要介護の方など自力で通院できない方は、歯科医師や歯科衛生士が直接訪問する、訪問歯科診療の利用もおすすめです。
部分入れ歯と総入れ歯のお手入れ方法の違い
部分入れ歯と総入れ歯のお手入れ方法の違いをチェックしておきましょう。
部分入れ歯 | ・金属のクラスプ部分は汚れが溜まりやすいので、専用ブラシの先端や歯間ブラシを使って丁寧に清掃する。 ・残存歯のむし歯リスクを少なくするため、クラスプと接触する残存歯は、特に念入りに清掃する。 |
総入れ歯 | ・口腔内の粘膜全体に密着するデザインになっているため、特に入れ歯の内側(粘膜に接する面)を丁寧に清掃する。 ・入れ歯はすき間が多いため、細部に磨き残しがないようにしっかり磨く。 |
入れ歯の4つのお手入れ注意点
入れ歯のお手入れをする際に注意すべき点を4つご紹介します。
熱湯による変形
入れ歯を洗浄する際、熱湯を使用することは避けましょう。
レジンと呼ばれるプラスチック素材でできた入れ歯は熱に弱いため、熱湯をかけると変形する恐れがあります。また、レジンはアルコール消毒薬にも弱いため、ぬるま湯や水での洗浄が安全です。
落下による破損
入れ歯は繊細な作りになっているため、洗面台などに落としてしまうと破損する恐れがあります。洗面台に水を溜めたり、洗面器の中でお手入れすると、落下による破損リスクを軽減できます。
また、小さな部分入れ歯を洗う際は、排水溝に流してしまう可能性もあるため、栓をしてから洗いましょう。

専用洗浄剤以外の使用
研磨剤が含まれている歯磨き剤を使うと、入れ歯の表面に傷が付き、汚れが付着しやすくなります。そのため、歯磨き剤は使用せず入れ歯専用洗浄剤を使用してください。
また、部分入れ歯に使用できない洗浄剤もあるため、説明書をしっかりと読みましょう。
乾燥による変形
入れ歯を使用しない時間帯や就寝時には、水や専用の洗浄液に浸した状態で保管しましょう。入れ歯は乾燥に弱く、変形したり割れたりする恐れがあるため、注意事項をしっかりと守って保管することが大切です。
入れ歯周辺と口腔内のケア方法
歯ぐきや口腔内の健康を保つための方法をご紹介します。
歯ぐきのマッサージ
入れ歯を外した際に、指や柔らかい歯ブラシで歯ぐきを優しくマッサージしましょう。
マッサージは痛みを感じない程度の力加減でおこなうのがコツです。
こまめなうがい
食後や入れ歯の着脱時には、こまめにうがいすることを習慣にしましょう。うがいには口腔内の食べカスや細菌を洗い流す作用があります。
高齢者は唾液の分泌が減少し口腔内の雑菌を洗い流す力が弱くなるため、殺菌効果のあるうがい薬を使用するとより効果的です。

残存歯のケア
入れ歯と残存歯の境目は丁寧にブラッシングをおこない、歯間ブラシやフロスなども活用しましょう。残存歯がむし歯になると、入れ歯の使用感にも影響が出るため、むし歯ができないことを目指してケアしてください。
舌のケア
舌ブラシや舌クリーナーを使って、舌の表面に付着した細菌を清掃しましょう。奥から手前に向かって軽くかきだすようにおこなうのがコツです。
口腔内の保湿
高齢者は口腔内が乾燥しやすいため、こまめな水分補給や必要に応じて保湿ジェルを利用しましょう。食事の際などに摂取するほか、日中、喉が渇いていなくても意識的に水分補給をしてください。

自分でおこなう入れ歯のお手入れや口腔ケアに不安を感じられる方には、歯科医院への相談や訪問歯科診療、口腔ケアに特化したデイサービスの利用をおすすめします。
トータルリハセンターでは、歯科衛生士が口腔ケアや口腔機能訓練をおこなっています。専門スタッフによる口腔ケアや機能訓練を受けることで、口腔内のトラブル防止にもつながります。
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まとめ
入れ歯は永久的に使用できるわけではないため、メンテナンスを怠ると劣化を早めてしまいます。歯科医院での定期検診やクリーニングと合わせて、ご自身でも毎日のセルフケアを欠かさずおこなうことが重要です。
ひとりでおこなうお手入れに不安がある方や、より専門的なお手入れを希望される方は、ぜひケアマネジャーやかかりつけ医にご相談ください。
口腔内の健康や入れ歯のケアを意識したら「DSセルリア」
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「トータルリハセンター(TRC)」では、機能訓練などに加え、摂食・嚥下機能訓練や口腔清掃、口腔機能向上のためのプログラムなど多角的に日常生活動作(ADL)の維持・改善に取り組んでいます。
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