高齢者の歯の健康を守るには?トラブルやケア方法を解説

歯が痛く頬を触る高齢者

歯の健康は、「食べる」ことだけでなく、寿命や全身の健康に関わる非常に重要な要素です。例えば、歯周病は糖尿病や心疾患のリスクを高め、むし歯や咀嚼(そしゃく)機能の衰えは栄養不足や運動能力の低下につながります。

特に高齢者はオーラルフレイル(口腔機能の低下)の予防が、健康寿命の延伸にもつながるため、最近では歯とお口の健康管理が見直されています。
この記事では、高齢者に起こりやすいお口のトラブル、お口と全身の健康との関わりについて解説します。

お口の役割

お口の主な役割は以下の通りです。

  • 食事を摂る
  • 呼吸する
  • コミュニケーションをおこなう
  • 細菌の侵入を防ぐ
  • 味覚による食べてはいけない食品の判断

特に、食事における3つの働きである、食べ物の摂取・咀嚼(噛み砕く)・嚥下(飲み込む)は、お口の重要な役割です。

お口の正しい役割

中でも歯は、食べ物を飲み込みやすい大きさ・形状にするうえで欠かせないため、口腔機能の中でも特に重要です。また、発声時は奥歯や前歯を使いながら舌や顎を複雑に動かすため、歯並びや歯の本数は発音や滑舌に深く関係します。
この他にも、お口は呼吸や会話、表情づくりなどの感情表現、周囲とのコミュニケーションにも役立ちます。

このように、お口の役割は多岐にわたります。
日常生活で重要な役割を持つお口ですが、加齢とともに歯の本数やお口の中の環境が変化し、口腔機能は徐々に衰えてしまいます。そのため、高齢者は、特にむし歯や歯周病予防などをしっかりとおこないましょう。

▼高齢者の口腔ケアについては、以下のコラムで紹介しています。

高齢者が気を付けたいお口のトラブル

高齢者はお口の乾燥や筋力低下によるトラブルが多く、トラブル回避のために、予防策や早めの対処を講じることが重要です。

むし歯・歯周病

加齢に伴う唾液の分泌量減少、視力の衰えなどから生じる磨き残し、また歯ぐきが下がってしまうことで、むし歯や歯周病のリスクが高まります。
特に歯周病は、歯を失う原因の第1位です。
また、入れ歯や歯と歯の間のお手入れ不足は、むし歯菌などの細菌が繁殖しやすくなる要因であるほか、過去に治療した歯が再びむし歯になる「二次カリエス」を招く恐れもあります。

むし歯・歯周病


むし歯や歯周病予防には、フッ化物配合の歯磨き剤や洗口剤を利用した口腔ケア、定期的な歯科検診の受診が効果的です。

ドライマウス(口腔乾燥症)

唾液の分泌量減少や咀嚼筋の衰え、水分や栄養不足は、ドライマウスのリスクを高めます。また、糖尿病や高血圧などの持病や薬の副作用の影響で、お口が渇きやすくなることもあります。

ドライマウス

ドライマウスを防ぐには、耳下腺や顎下腺などを優しく刺激する唾液腺マッサージをしたり、お口の中が乾燥しないようこまめな水分補給を心掛けたりと、日頃から意識することが大切です。
ただし、お口の中に痛みがあるときや対策を講じても改善しない場合は、別の疾患の可能性があるため、早めに医療機関を受診しましょう。

▼高齢者に多いお口の渇きについて、原因やリスク、予防方法などをご紹介しています。

誤嚥性肺炎

誤嚥性肺炎は、食道から胃に送られるはずの食べ物や飲み物、唾液などがお口の中の細菌と一緒に本来入ることのない気道に入ることで引き起こされる肺炎です。
この病気は命に関わる重篤な疾患や寝たきりの要因にもなるため、特に注意が必要です。

姿勢が悪いとのど(咽頭や喉頭)の位置が低下し、飲み込み時の喉頭の閉鎖不十分を招き、誤嚥が生じやすくなります。

正しい食事の姿勢

特に高齢者は、のどの筋肉が衰え飲み込む力が低下すると誤嚥しやすくなります。さらに、適切な口腔ケアを怠ると増殖した細菌が気管に入る可能性を高め、誤嚥性肺炎のリスクを増加させます。誤嚥性肺炎の予防には、背筋を伸ばし肩の力を抜いて軽く顎を引いた正しい姿勢での食事が大切です。また、定期的な嚥下体操や口腔リハビリによるのどの筋肉の機能維持、丁寧な歯磨きやうがいなどの口腔ケアも重要です。
食事をする際はとろみをつけるなど、飲み込みやすさに配慮した工夫も誤嚥防止の有効な手段となります。

▼誤嚥性肺炎予防を詳しく知るには以下のコラムがおすすめです。

噛む力・飲み込む力の低下

加齢に伴い歯の本数や唾液の分泌量が減少したり、咀嚼筋が衰えたりすると、噛む力や飲み込む力が低下します。加齢以外の要因は、脳梗塞やパーキンソン病などの疾患、お口の乾燥を引き起こす薬の副作用が挙げられます。また、軟らかな食事ばかりに偏ると、お口が慣れてしまい、噛む・飲み込む力がさらに衰える悪循環に陥ります。

噛む力の低下

噛む力や飲み込む力を衰えさせないためには、唾液腺マッサージや嚥下トレーニング、あいうべ体操をおこない、歯ごたえのある食材を取り入れた食事などが有効です。また、定期的に歯科検診を受け、お口のトラブル予防に努めましょう。

歯の健康は健康寿命の長さにつながる

80歳で20本以上の歯を保っている人は、認知症や転倒のリスクが少ないという報告もあります。このことから、オーラルフレイルの予防は、健康寿命の延伸に寄与することがわかります。
しかし、20〜30代の日本人の歯の数は28本、75歳以上の高齢者は若い世代のおよそ半分ほどの16本と少なく、健康な歯の保持は簡単ではありません。そのため、定期的な歯科検診と適切な口腔ケアでオーラルフレイル予防に努め、生活の質(QOL)の維持、全身の健康状態を良好に保ちましょう。

お口の健康を守るためにできるケア

お口の健康を守るためには、毎日のセルフケアと歯科医院によるプロケアが欠かせません。
セルフケアは、毎食後と就寝前の歯磨き、あいうべ体操などのお口の体操、歯ごたえのあるものを食べる食事の工夫などが挙げられます。特に歯磨きで、フッ化物配合歯磨き剤やフロスを用いたケアをおこなうむし歯の予防がおすすめです。
歯科医院でのプロケアは、定期的な歯科検診や歯石の除去、正しい歯磨き方法の指導などが挙げられます。

こうしたケアを続けることで、お口の健康をしっかりと守ることができます。

先生

まとめ

適切なセルフケアと定期的な歯科検診で歯周病やむし歯を防ぎ、80歳でも20本以上の歯を保持することが、生活の質(QOL)の向上につながります。ご本人はもちろんご家族さまも、歯磨きや食事の見直しなど、できることから始めてみましょう。

口腔ケアに取り組むことで、いつまでも元気に自分のお口で食事を摂り、健康寿命を伸ばしてより充実した生活を送っていきましょう。ぜひ、今回の記事で紹介した情報を参考にしてください。

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