転倒予防のポイントと要因!身体のバランスを向上させよう
わずかな段差でつまずいたり転倒したりする頻度が増えていると感じることはありませんか?
加齢や運動不足などが原因となり、膝関節の動きが鈍くなると転倒しやすくなります。
高齢者の場合、転倒が原因で寝たきりになる人も少なくありません。
今回は「転倒予防の方法」をご紹介します。
目次
転倒予防の重要性
高齢者の転倒は全体の約10%から20%にみられると報告されています。年齢が上がるほど転倒事故の割合が高く、85歳以上では19.4%と、約5人に1人以上が転倒していることになります。
[参考]内閣府「平成22年度 高齢者の住宅と生活環境に関する意識調査結果:転倒事故」
高齢者が転倒すると、骨折や脳内出血、頭部挫傷など重大な外傷につながる可能性が高いです。
また、転倒により長期安静状態になるとADL低下の恐れがあります。著しくADLが低下すると、リハビリで歩けるようになっても転倒前の身体能力に戻らないことがあるため、転倒を予防することが重要です。
ADL(Activities of Daily Living)とは?
移動・排泄・食事・更衣・洗面・入浴といった、個人が日常生活を維持するために最低限必要な活動を指します。
転倒の危険性は本人だけでなく、家族やケアマネジャー、看護・介護職員などで共有して、転倒予防に努めましょう。
高齢者が転倒することでよくみられる骨折は、以下の4つです。
- 大腿骨近位部の骨折:脚の付け根・股関節の骨折
- 脊椎圧迫骨折:背骨の骨折
- 上腕骨近位端骨折:腕の付け根の骨折
- 前腕骨遠位端骨折:手首の骨折
▼日常生活動作(ADL)低下を予防するポイントなどに関連する記事はこちら
高齢者は骨が弱くなっていることが多いため、容易に骨折を起こしやすくなっています。消費者庁のデータによると骨折をした場合、要入院となってしまう高齢者が76%にもなるそうです。
1度転倒すると、歩くことへの恐怖心や不安感が湧き上がることも少なくありません。
恐怖心から歩かなくなると廃用症候群を引き起こしやすく、さらに身体機能を低下させ、転倒を助長します。
廃用症候群とは?
寝たきりに近い状態で、加齢や疾患などによる活動性の低下や過度の安静で生じる、身体的・精神的諸症状の総称です。主な症状としては、筋萎縮・誤嚥性肺炎・起立性低血圧・床ずれ・うつ状態・見当識障害が挙げられます。
骨折が原因で起こる寝たきりや歩行障害などのリスク軽減のためにも、高齢者の転倒予防は家族や周囲の介護者全員で気を配ることが大切です。
転倒の要因
転倒しやすい人、特に高齢者で転倒を繰り返す人の原因は、環境などの外的要因と身体的な内的要因が考えられます。
外的要因
転倒の原因となる外的要因をできる限り排除し、転倒を防止しましょう。
- 階段や段差
- 滑りやすい場所
- 足元が暗い場所
- 手すりのない生活スペース
- 障害物
- 不慣れな生活環境
- 足に合っていない靴
内的要因
内的要因は、加齢による身体機能の変化や疾患による身体症状などが考えられます。
転倒の原因は人それぞれのため、その人の特徴を捉えて、転倒予防を行うことが大切です。
加齢変化
- 筋力の低下
- 姿勢の変化
- 姿勢反射の低下
- バランス感覚の低下
- 運動速度の低下
身体要因
- 認知症
- 起立性低血圧
- 不整脈
- 脳血管障害
- 変形性関節症
- 変形性脊椎症
- 骨粗鬆症
その他の内的要因
睡眠薬や抗不安薬、抗精神病薬に加え、抗ヒスタミン薬・抗てんかん薬・利尿薬・抗パーキンソン病薬など、薬の服用も挙げられます。
転倒予防対策(外的要因)
転倒事故が多い場所
高齢者の転倒事故は自宅での発生が最も多く、全体の48%を占めるというデータもあります。
65歳以上の高齢者が自宅での転倒事故が多い場所の割合と事故状況です。滞在時間が最も長い居室での転倒が45%を占めています。
場所 | 割合 | 事故状況 |
---|---|---|
居室 | 45% | ・こたつ布団やカーペット、コードに足が引っかかり転倒 ・部屋と廊下の段差につまずいて転倒 ・ベッドから転落 |
階段 | 18.7% | ・スリッパが脱げてバランスを崩したり、滑ったりして転倒 ・暗闇で足元がよく見えず階段を踏み外して転落 |
台所・食堂 | 17% | ・吊り棚から荷物を取る時に踏み台から転倒 ・キッチンマットにつまずいて転倒 ・濡れた床にスリッパが滑って転倒 |
玄関 | 5.2% | ・段差や玄関マットにつまずき転倒 ・靴を履いたり脱ぐ際にバランスを崩して転倒 |
原因から転倒予防を考える
高齢者の転倒原因に多いのは、段差でのつまずきです。わずかな段差でも、足腰の弱い高齢者には負担が大きいため、それぞれ適切な方法をとることが大切です。
スロープの設置や床のかさ上げ、式台などを設置してできる限りの段差を解消し、階段や廊下に常夜灯を設置することも転倒予防になります。
また、バランスを崩しやすい階段や立ち座りするスペースには、手すりを設置しておくとよいです。
そのほかにも下記の対策などが挙げられます。
- よく使うものは手の届きやすい場所に置く
- 高い所のものを減らし踏み台は使わない
- ベッドからの転落防止にはベッドガードを設置する
- コードの配線は動線を避ける
- 浴室では石鹸やシャンプーの使用後に床を洗い流して乾かす
- 台所の床は水滴などで滑らないよう拭き掃除を徹底する
- 滑りやすいのでスリッパは使わない
必要に応じて取り外しやすい、便利な介護用グッズを用いて対策を行うこともできます。
転倒予防対策(内的要因)
内的要因の代表的な身体機能の低下は、筋力とバランス感覚です。
転倒予防には、下半身の筋力が重要になります。立つ・座る・歩くといった基本的な移動機能に必要な下半身、体幹の筋力トレーニングやストレッチが大切です。
転倒予防に有効な筋肉
下半身には多くの筋肉がありますが、なかでも重要な筋肉は次の6つです。
- 下腿三頭筋:ふくらはぎの筋肉
- 大腿四頭筋:太ももの前の筋肉
- 大殿筋:お尻の筋肉
- 中殿筋:お尻の横の筋肉
- 前脛骨筋:脛の筋肉
- ハムストリングス:太ももの後ろの筋肉
下半身だけでなく上半身の筋肉も鍛えることで、しっかり腕を振れるようになります。
腕を振って歩くとバランスが取りやすくなるだけでなく、腕を振り子のように動かすと全身の血流を促し、脳疲労を取りやすくしてくれます。
歩行、バランス、筋力などの運動機能の低下は、すぐに改善することはできません。毎日の運動を習慣化しましょう。
まとめ
高齢者の転倒予防について、転倒する要因から対策をご紹介しました。
転倒の要因には、外的要因と内的要因があります。
外的要因は周囲の協力で排除できるものも多いです。内的要因は加齢による筋力低下や身体要因があり、ストレッチやリハビリで改善することが可能です。
予防の知識を得ること、自分の転倒リスクを知ること、転倒しやすそうな場所を改善することが重要といえます。
筋力トレーニングやストレッチを習慣化し、転ばない身体を作りましょう。
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