フレイル・サルコペニア・ロコモの違いと予防を解説!

階段がつらい高齢者

「フレイル」や「サルコペニア」、「ロコモ」という言葉を耳にしたことがありますか?
これらは高齢者が「要介護状態」や「寝たきり」になりやすい状態にあるという “共通点” がある疾患概念です。
今回は、高齢者特有の健康課題「フレイル」「サルコペニア」「ロコモ」についてご紹介します。

高齢化が進む日本では、総人口に占める高齢者人口の割合において75歳以上が初めて29.1%と過去最高となり、10人に1人が80歳以上となりました(総務省の人口推計より)。
高齢社会において高齢者の健康寿命を伸ばし、生活の質(QOL)を高めるために気をつけたいのが、加齢に伴う機能変化や機能低下などによる健康障害です。
今回のテーマ、「フレイル」「サルコペニア」「ロコモ」は、要介護の大きな要因となる運動器疾患のため、予防や対策について確認していきましょう。

運動器とは

呼吸にかかわる器官は「呼吸器」、消化にかかわる器官は「消化器」といった言葉と同様に、「運動器」は骨・関節・筋肉・靱帯・神経といった人間の体の動きを担当する組織・器官のこと。

フレイル・サルコペニア・ロコモ、それぞれの特徴

高齢者の健康にかかわる3つの運動器疾患が「フレイル」「サルコペニア」「ロコモ」です。それぞれに特徴があり、「フレイル」は「サルコペニア」や「ロコモ」の影響を大きく受けることが知られています。

フレイル

フレイルは、日本老年医学会が2014年に提唱した概念で、「Frailty(虚弱)」の日本語訳です。 健康な状態と要介護状態の中間に位置し、身体的機能や認知機能の低下が見られる状態のことを指します。
しかし、適切な治療や予防を行うことで生活機能の維持や改善の可能性があります。

フレイルステップ

フレイルの種類

身体的フレイル

関節など、運動器の障害で移動が困難になったり(ロコモティブシンドローム)、筋肉が衰えること(サルコペニア)が代表的な例です。何もしないと、加齢とともに筋肉量や筋力、身体機能が低下していきます。

精神・心理的フレイル

定年退職やパートナーを失ったりすることで引き起こされる、うつ状態や軽度の認知症の状態などを指します。

社会的フレイル

家族や友人・知人との交流機会が減少するなど、社会的に脆弱な状態にあることを示します。社会とのつながりは、要介護の重要なリスク要因の一つで生活範囲が狭まり、日常生活にさまざまな悪影響を及ぼします。

オーラルフレイル

「オーラルフレイル」は口腔機能の軽微な低下や食の偏りなどを含み、身体の衰え(フレイル)の一つです。「オーラルフレイル」の始まりは滑舌低下や食べこぼし、わずかなむせ・かめない食品が増える・口の乾燥等、ほんの些細な症状であり見逃しやすく気がつきにくい特徴もあるため、注意が必要です。

オーラルフレイル

オーラルフレイルについてはこちら

もしかしてフレイル?

3つ以上が当てはまるとフレイル、2つ以内の場合は「プレフレイル(フレイルの前段階)」に当てはまる可能性があります。

  • 体重の減少(6か月間で2~3㎏減った)
  • 理由もなく疲れやすい
  • 歩行速度の低下(青信号の間に横断歩道が渡れるか心配)
  • 握力の低下(ペットボトルが開けられない)
  • 身体活動の低下(軽い運動や定期的な運動をしていない)

サルコペニア

サルコペニアは加齢に伴い筋肉量が減少し、筋力や身体機能が低下した状態のこと。生活の質の低下や転倒、骨折・寝たきりなどの原因になり、フレイルサイクルの「筋力の低下」に関係しているため、フレイルの原因にもなります。

サルコペニアの評価では、筋肉量・筋力・身体機能が指標となり、一般的には下記のようなテストや検査が行われます。

もしかしてサルコペニア?

  • 体格指数(BMI※)が18.5未満 
    ※BMIの計算式は、体重(kg)÷{身長(m)の2乗}
  • ふくらはぎの最も太い部分の周径
    指輪っかテスト
  • 握力
  • 5回立ち上がりテスト
    椅子に座って5回立ち上がる時間を計測するテスト
  • バランステスト
指輪っかテスト

ロコモ(ロコモティブシンドローム)

ロコモは、骨や関節・神経・筋肉などの運動器の衰えによって、立つ・歩くといった移動動作機能が低下した状態で、要介護や寝たきりになりやすい状態です。
ロコモの対象は高齢者だけでなく、若い人も含むのが特徴といえます。

フレイルとの違い

ロコモは「運動器の衰え」が原因となる機能低下のことで、フレイルは運動器だけでなく、「消化器や脳なども含めた全身」の機能低下が原因になります。

サルコペニアとの違い

サルコペニアの筋肉量や筋力といった基準と比較すると、ロコモはより広い運動障害を指します。

ロコモの原因、主な3大疾患

変形性膝関節症

70代女性の約70%がこの病気にかかっているといわれています。膝関節の軟骨のすり減りなどが原因で、慢性的に膝に痛みが生じる疾患です。

骨粗しょう症

骨密度が低下して骨がもろくなり、ちょっとした転倒で骨折してしまうリスクが高くなります。

骨粗しょう症についてはこちら

骨粗しょう症
変形性腰椎症

椎間板や腰椎の変形が原因で腰痛が起こる疾患です。脊柱管狭窄症といった病気の原因となります。
脊柱管狭窄症を放置すると、姿勢によらず足にしびれや痛みが生じたり、歩きづらくなったり、排尿や排便が困難になることがあります。

フレイル・サルコペニア・ロコモを予防する

「フレイル」「サルコペニア」「ロコモ」は、健常から要介護へ移行する中間の段階です。適切な対応によって健康な状態へと改善する可能性が十分にあります。少しでも早い段階から取り組むことが重要なので疲労感や意図しない体重の減少、歩く速度が遅くなったなどの変化に気づいたら「予防」を意識しましょう。

食事対策と運動対策をあわせて行うことがポイント

フレイル・サルコペニア・ロコモの3つに共通する予防対策は、「食事」と「運動」です。これらの症状を予防・改善するためには、適切な対策が必要になります。

食事のポイント

筋肉や骨の健康を維持するための適切な栄養摂取が重要です。タンパク質やビタミン、ミネラルなどを含むバランスの良い食事を摂るようにしましょう。
また「オーラルフレイル」による口腔機能低下は「食事を摂る」ことに大きな影響を与えますので、歯科医院や訪問歯科診療で治療を受けるなどの対策が必要です。

オーラルフレイルについてはこちら

バランスのよい食事高齢者

運動のポイント

筋肉や骨の健康を促進する有酸素運動や、筋力トレーニングを組み合わせて行います。高齢者自身の体調に合わせて、ウォーキングや自宅でもできるスクワットなど、適度な運動を心掛けましょう。

介護予防トレーニング

社会活動参加のすすめ

自宅に閉じこもり社会参加の機会が減ることでロコモやサルコペニアをまねき、さらに活動量の低下で認知症など、精神機能を低下させて「フレイル」に陥る可能性も。
高齢者が他者と交流するメリットを理解し、社会活動への参加でフレイルへの対策を行いましょう。

高齢者が他者と交流するメリット

  • 脳の活性化
  • コミュニケーション能力の維持
  • 身体機能の向上
  • 地域とのかかわり
  • 身だしなみに気を使う

自治体での取り組みを利用してみる

人生100年時代を意識した自治体でのさまざまな取り組みが行われています。
フレイルや介護の相談は、住んでいる自治体の市役所や区役所の介護保険課や福祉課・介護課、また「地域包括支援センター」でも相談できます。

東京都福祉局

東京都では東京都福祉局が「フレイル予防ポータル」を展開しています。
介護予防・フレイル予防の基礎から予防と対策、都内区市町村における介護予防・フレイル予防にかかわる取り組み内容について紹介されています。

神奈川県横浜市

東京都健康長寿医療センター研究所社会参加とヘルシーエイジング研究チーム監修のもと、フレイル予防普及啓発のための地域人材向けテキスト「フレー!フレー!フレイル予防応援ガイドブック」を作成しました。フレイル予防のポイント・地域で取り組むためのポイント・運動・栄養・口腔・社会参加のプログラムを詳しくご紹介します。

兵庫県神戸市

日常生活を振り返りながらフレイル予防の大切さに早く気づき、取り組んでいただくための「フレイル予防支援事業」と、フレイル改善に有効なプログラムを提供することで、元気を取り戻し、社会参加を目指す「フレイル改善通所サービス」を一体的に運営し、健康寿命の延伸を図ります。

まとめ

高齢者を要介護にしてしまう3つの原因について、それぞれの特徴や予防・対策のポイントなどをご紹介しました。
まずは「フレイル」「サルコペニア」「ロコモ」の症状が出ていないか、確認してみましょう。気になる症状がある場合は、かかりつけ医や自治体の相談窓口、地域の包括支援センターなどに相談することをおすすめします。

今の生活習慣や食生活を見直し、十分な栄養摂取や適度な運動、社会への参加などで健やかな生活が過ごせるように意識することが大切です。そして、ご自身やご家族みんなで予防に取り組みましょう。

フレイル・サルコペニア・ロコモの予防はDSセルリアのリハビリテーションで

当社では、かかわるすべての方々の「自己実現」をサポートすることを理念とし、サービスを提供しています。

「トータルリハセンター(TRC)」では、身体のリハビリに加えて、摂食・嚥下機能訓練や口腔清掃など、口腔機能向上のためのプログラムを提供しています。
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