高齢者の健康を支える座位体操
高齢者の健康維持や転倒予防に効果的な座位体操は日常生活に取り入れやすく、身体の柔軟性や筋力を維持することに役立ちます。
今回は高齢者の座位体操の目的や効果、具体的な体操方法についてお話しします。
目次
高齢者の転倒リスク
高齢者の転倒は全体の約10%から20%にみられると報告されており、年齢が上がるほど転倒事故の割合が高くなります。
高齢者の転倒リスクは、以下の要因によって増加する可能性があります。
- 筋力の低下
- バランスの悪化
- 平衡機能の低下
筋力の低下
筋力の低下が起こると体の姿勢を維持するための必要な筋肉が弱くなり、バランスを失いやすくなります。
さらに、身体の動きを制御する能力にも影響を与え、転倒のリスクを増加させます。
バランス感覚の低下
バランスが低下すると、日常生活での移動や姿勢の変更が困難になる恐れがあります。
たとえば、歩行時や立ち上がり時にバランスを崩しやすくなり、転倒につながる可能性が高まります。
バランスの低下の原因は、筋力の低下と相互に関連し合っており、転倒リスクを増大させる要因になります。
平衡機能の低下
「平衡機能」とは、視覚、内耳、固有感覚の情報を脳で統合し、姿勢やバランスを維持する体の重要な機能です。人が歩く時や動く時、これらの情報が脳で調整され、適切な動きがおこなわれるようになっています。
この平衡機能が低下すると身体の反応が鈍くなり、急な姿勢変化や不意の動作に適切に対応することが難しくなります。
これにより、転倒した際に素早く体勢を立て直すことが難しくなり、重篤なケガのリスクが高まります。
以上のように、高齢者の転倒リスクは筋力の低下やバランスの悪化、平衡機能の低下などで増加する可能性が高いです。
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高齢者向けの座位体操の目的と効果
座位体操の目的
健康的な生活を送るためにも普段の身体づくりが重要で、座位体操もそのひとつです。高齢者向けの座位体操には以下のような目的があります。
- 筋力と体力の維持・向上
- 柔軟性の向上
- バランス感覚の改善
- 血液循環促進
- 心身のリラックス
座位体操は座った状態でおこなうため、バランス感覚や安定性が必要な姿勢の変化や移動が少なく、高齢者でも安全におこなうことのできる体操です。
また、比較的簡単な動作から始められ、運動経験の有無に関わらず取り組むことができます。
座位体操の効果
高齢者向けの座位体操には以下のような効果があります。
筋力と体力の維持・向上
体操は普段使う筋肉だけでなく、日常生活ではあまり使わない筋肉も刺激します。
これにより、全身の筋力や体力の維持・向上につながります。
脳の活性化と認知症予防
体操による運動刺激は脳の活性化を促します。
脳の活性化は認知症の予防に効果的であると期待されています。
座位体操は単に筋力向上だけでなく、脳の健康維持に効果的な運動です。
比較的簡単な動作から始めることができるため、日常的に座位体操をおこなうことで、心身ともに健康的な生活を送ることができます。
座位体操で使う椅子の選び方
高齢者が座位体操で使う椅子を選ぶときのポイントは以下の通りです。
安定性
椅子は安定しており、滑りにくく、転倒しにくいものを選ぶことが重要です。
四つ脚の椅子など、安定した椅子を選び、滑り止めの付いた床で体操をおこないましょう。
高さ
ひざが90度程度に曲がる高さの椅子を選びましょう。
背もたれ
背もたれのある椅子を選ぶことで、安定感が増し、姿勢を保ちやすくなります。
背もたれがない椅子の方が動きやすい場合は、健康状態に合わせて選ぶことが大切です。
クッション性
正しく骨盤を立てて座れているかを確認するために硬めのものを選びましょう。
座位体操で使う椅子は安全に運動の効果を最大限に引き出せる椅子を選びましょう。
適切な椅子を選ぶことで、高齢者が安心して体操に取り組めるようになります。
座ってできる足の体操
転倒対策になる足の体操
座って足を肩幅程度に開く
背筋を伸ばし、腕は自然な状態に下ろす
ゆっくりと息を吐きながら、両足のつま先を地面から上げ、かかとを地面にしっかりとつける
ゆっくりと息を吸いながら、両足のつま先を地面に下げ、元の姿勢に戻す
ゆっくりと息を吐きながら、両足のかかとを地面から上げ、つま先立ちの姿勢をとる
ゆっくりと息を吸いながら、両足のかかとを地面に下げ、元の姿勢に戻す
この動作をゆっくりと繰り返します。
最初は数回から始め、徐々に回数やセット数を増やしていきましょう。
バランス感覚を高める足指の体操
両手は椅子の両側に置く
片足をゆっくりと伸ばして足裏を平らにする
伸ばした足のつま先をゆっくりと開いたり閉じたりと「グー・パー」を繰り返す
伸ばした足をゆっくりと曲げて元の位置に戻す
同じ動作をもう片方の足でもおこない、左右の足で10回ずつ繰り返しましょう。
定期的におこなうことで、足趾(そくし)力・バランス感覚を養えます。
筋力や柔軟性を向上させる太ももの体操
両手は椅子の両側に置く
片足を伸ばしながら上げ、太ももの筋肉が伸びるようにつま先を上にする
伸ばした足をゆっくりと曲げて元の位置に戻す
同じ動作をもう片方の足でもおこない、左右の足で10回ずつ繰り返しましょう。
太ももの筋力と柔軟性が向上します。
座ってできる腕の体操
座ってできる腕の体操を2つご紹介します。
肩こりの方にオススメの体操
両手の指先で肩に触れる
ひじで大きく丸を描くようにリズム良く20回、前に回す
反対の後ろ回しも20回おこなう
肩甲骨を大きく動かすことを意識しましょう。
肩こりの緩和に役立つだけでなく肩の筋肉を柔らかくし、肩甲骨の動きを促進します。
腕の筋力を強化したい方にオススメの体操
椅子にしっかり座って両腕を水平まで上げる
背中を丸め、腕を前に伸ばして両手をパーに広げる
両手をグーにして、胸を張るようにひじを引く
同じ動作を10回ずつ繰り返しましょう。
腕の筋力と柔軟性が向上します。
座ってできる腕と足を使う体操
心肺機能を高めることができる体操
背もたれから背中を離し、背筋をまっすぐ伸ばして座る
腕を前後に大きく振りながら、リズム良く足踏みする
3分間を目安に繰り返し続ける
立ち上がりや歩行などの動作を安定させるためには筋力だけでなく、心肺機能、そして全身の持久力を向上させることも必要です。
まとめ
座位体操は高齢者の健康維持や生活の質向上に効果的な運動方法です。
体操前には関節や筋肉を軽くほぐすための準備運動をおこない、身体を温めてから本格的な座位体操に取り組みましょう。
適切な椅子を使用して定期的な体操を取り入れることは、筋力や柔軟性を向上させ、転倒予防にもつながります。
また、座位体操はグループでおこなうこともでき、同じ目標に向かって励まし合えるなど、社会的な交流や生活の喜びを増加させる効果もあります。
日常生活に取り入れやすい座位体操で、健康的な老後の生活を目指しましょう。
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