高齢者の健康を支える座ってできる座位体操の効果と方法

高齢者の健康維持や転倒予防に効果的な座位体操は日常生活に取り入れやすく、体の柔軟性や筋力を維持することに役立ちます。
今回は高齢者へおすすめの座ってできる体操(座位体操)の効果や方法についてご紹介します。
目次
高齢者に多い転倒リスクとその原因
65歳以上の高齢者の転倒は約20%にみられると報告されており、年齢が上がるほど転倒事故の割合が高くなります。
高齢者の転倒リスクは、以下の要因によって増加する可能性があります。
- 筋力の低下
- バランス感覚の低下
- 平衡機能の低下

【1】筋力の低下
筋力の低下が起こると体の姿勢を維持するために必要な筋肉が弱くなり、バランスをとることが難しくなります。
さらに、体の動きを制御する能力にも悪影響を与え、転倒のリスクを増加させます。
【2】バランス感覚の低下
バランス感覚が低下すると、日常生活での移動や姿勢の変更が困難になる恐れがあります。
たとえば、歩行時や立ち上がり時にバランスを崩しやすくなり、転倒につながる可能性が高まります。
バランス感覚の低下の原因は、筋力の低下と相互に関連し合っているため、転倒リスクを増大させる要因になります。
【3】平衡機能の低下
「平衡機能」とは、視覚、両耳の中にある内耳感覚、固有感覚の情報を脳で統合し、姿勢やバランスを維持する体の重要な機能です。人が歩くときや動くとき、これらの情報が脳で調整され、適切な動きがおこなわれるようになっています。
この平衡機能が低下すると体の反応が鈍くなり、急な姿勢変化や不意の動作に適切に対応することが難しくなります。
これにより、転倒しそうになった際に素早く体勢を立て直すことや受け身をとることが難しくなり、重篤なケガのリスクが高まります。
以上のように、高齢者の転倒リスクは筋力の低下や感覚の低下、平衡機能の低下などで増加する可能性が高いです。
転倒予防についてより詳しく知りたい方はこちら▼
椅子に座ってできる座位体操と期待できる効果
椅子に座ってできる座位体操は、体への負担が少ない運動方法です。
以下のような目的と効果があります。
座位体操の目的
健康的な生活を送るためにも普段の体づくりが重要で、座位体操もその手段のひとつです。高齢者向けの座位体操には以下のような目的があります。
- 筋力と体力の維持・向上
- 柔軟性の向上
- バランス感覚の改善
- 血液循環の促進
- 心身のリラックス

座位体操は座った状態でおこなうため、バランス感覚や安定性が必要な姿勢の変化や移動が少なく、高齢者でも安全におこなうことのできる体操です。
また、比較的簡単な動作から始められ、運動経験の有無に関わらず取り組むことができます。
座位体操の効果
高齢者向けの座位体操には以下のような効果があります。
筋力と体力の維持・向上
体操は普段使う筋肉だけでなく、日常生活ではあまり使わない筋肉も刺激します。
これにより、全身の筋力や体力の維持・向上につながります。
脳の活性化と認知症予防
体操による運動刺激は脳の活性化を促します。
脳の活性化は認知症の予防に効果的であると期待されています。
座位体操は単に筋力向上だけでなく、脳の健康維持にも効果的な運動です。
座位体操を習慣にすることで、心身ともに健康的な生活を送ることができます。
座位体操に適した椅子のポイント
高齢者が座位体操で使う椅子を選ぶときの4つのポイントは以下のとおりです。

【1】安定性
椅子は安定性があり、滑りにくく、倒れにくいものを選ぶことが重要です。
四つ脚の椅子など、安定した椅子を選び、滑りにくい床で体操をおこないましょう。
【2】高さ
膝が90度程度に曲がる高さの椅子を選びましょう。
【3】背もたれ
背もたれのある椅子を選ぶことで、安定感が増し、正しい姿勢を保ちやすくなります。
背もたれがあると動きにくい場合は、背もたれがない椅子を選ぶなど、健康状態に合わせて選ぶことが大切です。
【4】クッション性
骨盤を正しく立てて座れているかを確認するために硬めのものを選びましょう。
座位体操で使う椅子は、安全に運動の効果を最大限に引き出せる安全な椅子を選びましょう。
適切な椅子を選ぶことで、高齢者が安心して体操に取り組めるようになります。
高齢者におすすめの足と腕に効果的な座位体操
座ってできる足の体操
【転倒予防になる足の体操】
椅子に座って足を肩幅程度に開く
背筋を伸ばし、腕は自然な状態に下ろす
ゆっくりと息を吐きながら、両足のつま先を地面から上げ、かかとを地面にしっかりとつける
ゆっくりと息を吸いながら、両足のつま先を地面に下げ、元の姿勢に戻す
ゆっくりと息を吐きながら、両足のかかとを地面から上げ、つま先を地面にしっかりとつける
ゆっくりと息を吸いながら、両足のかかとを地面に下げ、元の姿勢に戻す
この動作をゆっくりと繰り返します。
最初は数回から始め、徐々に回数を増やしていきましょう。

【バランス感覚を高める足指の体操】
両手は椅子の両側に置く
片足をゆっくりと伸ばして足裏を平らにする
伸ばした足のつま先をゆっくりと開いたり閉じたりと「グー・パー」を繰り返す
伸ばした足をゆっくりと曲げて元の位置に戻す
【筋力や柔軟性を向上させる太ももの体操】
両手は椅子の両側に置く
片足を伸ばしながら上げ、太ももの筋肉が伸びるようにつま先を上にする
伸ばした足をゆっくりと曲げて元の位置に戻す
同じ動作をもう片方の足でもおこない、左右の足で10回ずつ繰り返しましょう。
太ももの筋力と柔軟性が向上します。

座ってできる腕の体操
椅子に座ってできる腕の体操を2つご紹介します。
【肩こりの方におすすめの体操】
両手の指先で肩に触れる
ひじで大きく円を描くようにリズム良く20回、前に回す
反対の後ろ回しも20回おこなう
肩甲骨を大きく動かすことを意識しましょう。
肩こりの緩和に役立つだけでなく肩の筋肉を柔らかくし、肩甲骨の動きを促進します。

【腕の筋力と柔軟性を強化したい方におすすめの体操】
椅子にしっかり座って両腕を水平まで上げる
背中を丸め、腕を前に伸ばして両手をパーに広げる
両手をグーにして、胸を張るようにひじを引く
同じ動作を10回ずつ繰り返しましょう。
腕の筋力と柔軟性が向上します。
座ってできる腕と足の体操
椅子に座ってできる腕と足を使う体操をご紹介します。
【心肺機能を高めることができる体操】
背もたれから背中を離し、背筋をまっすぐ伸ばして座る
腕を前後に大きく振りながら、リズム良くその場で足踏みする
3分間を目安に繰り返し続ける
立ち上がりや歩行などの動作を安定させるための心肺機能・全身の持久力が向上します。
高齢者にとって、座ってできる座位体操は安心して続けられる運動方法のひとつです。
筋力や柔軟性を高めると同時に、日常生活の動作をスムーズにし、転倒予防にもつながります。
毎日の習慣として座位体操を取り入れ、健康的な暮らしを目指しましょう。

仲間と一緒におこなう座位体操
座ってできる体操は、ひとりでも気軽に取り組めますが、仲間と一緒におこなうことで楽しさがいっそう広がります。
特に、他の方と会話を交えながら体を動かす時間は、自然と笑顔が生まれ、気分を前向きにしてくれます。
また、長く続けるためには「楽しい」と感じられる環境が欠かせません。無理なく、心地よく続けられる環境づくりが、座位体操を習慣にするためのポイントです。

デイサービスで体操をするメリット
デイサービスでは、座ってできる体操を無理なく、安全におこなうための工夫がされています。
デイサービスで体操することの4つのメリットをご紹介します。
【1】専門スタッフのサポート
体の状態に合わせた動き方を丁寧に教えてもらえるので、運動に自信がない方も安心しておこなうことができます。
【2】安心・安全な環境
バランスを崩しにくい椅子の使用や滑りにくい床、広々としたスペースなど、安心・安全に座位体操やその他の運動ができる工夫がされています。
【3】交流の場としての役割
体操を通じて自然と会話が生まれ、参加者同士の関係も深まっていきます。気が合う仲間との時間は、生活の中の大きな楽しみにもなります。
【4】定期的な運動の習慣化
決まった曜日に通うことで、運動のリズムが整いやすくなり、「今日は体操の日」と生活にメリハリが付きます。
トータルリハセンターでは、専門スタッフの支援のもと、安心して体操やリハビリに取り組める環境をご用意しています!ぜひお問い合わせください▼
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まとめ
座位体操は、高齢者の健康維持や生活の質向上に効果的な運動方法のひとつです。
適した椅子を使い、定期的におこなうことで、筋力や柔軟性の維持・向上、さらには転倒予防の効果も期待できます。
座位体操をおこなう前は、関節や筋肉をやさしくほぐすための準備運動をおこない、体を温めてから本格的に取り組みましょう。
また、デイサービスなどで仲間と一緒に取り組む座位体操は、楽しみながら継続しやすく、交流の機会を増やすことにもつながります。
日常生活に取り入れやすい、座ってできる座位体操で、健康的な老後の生活を目指しましょう。
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