寝たきりでもできる筋力低下を防ぐリハビリ方法
寝たきりの状態が続くと、どうしても筋力が衰えてしまいます。
特に安静にしている期間が長引くほど、その影響は大きくなる可能性があります。しかし、リハビリを取り入れることで、筋力の低下を予防することができます。
今回は、寝たきりによる筋力低下の原因や、それを防ぐためのリハビリのポイントをご紹介します。
目次
寝たきりとは
寝たきりとは、生活においてなんらかの介助を要し、1日のほとんどをベッドで過ごす方、または1日中ベッド上で過ごす方の状態を指します。寝たきりになると筋肉量が減少し、筋力が衰えて、さまざまな問題が発生します。日常生活の基本的な動作すら困難になることがあるため、注意が必要です。
厚生労働省資料:障害高齢者の日常生活自立度(寝たきり度)PDF
寝たきりが原因の筋力低下の種類
筋力低下は、状況により呼び名が変わります。以下の代表的な種類を紹介します。
廃用症候群
廃用症候群とは、長期間の安静や寝たきりの状態が続くことで、全身の機能が低下する状態を指します。
特に高齢者に多く見られ、筋力の低下や関節の動きが制限される筋骨格系の問題、心拍出量の減少や立ちくらみなどの循環器系のトラブルを発生させることがあります。
また、自立心や意欲の低下、うつ症状、さらには社会的孤立感を招くなど精神面にも悪影響を及ぼすこともあります。
このような状態を予防するためには、無理のない範囲で定期的に体を動かし、リハビリや気分転換を取り入れることが重要です。筋力の維持と心のケアを両立させ、回復を目指しましょう。
サルコペニア
サルコペニアとは、加齢に伴う筋肉量の減少や身体機能が低下した状態を指します。立ち上がりや歩行が困難になり転倒もしやすくなるため、日常生活に支障が生じて介護が必要になる場合があります。
原因の多くは加齢ですが、運動不足や栄養の偏りも関係します。早めに運動習慣を身につけ、適切な栄養を摂ることで、サルコペニアの予防が期待できます。
フレイル
フレイルとは、加齢により筋力や心身が衰えた虚弱な状態を指します。身体的、精神的、社会的なストレスに対する抵抗力が弱まる特徴があります。健康と要介護の中間に位置しているため、早く気付いて筋力の維持など対策することが大切です。
寝たきりで起こる筋力低下以外の弊害
筋力低下以外にも、寝たきりになると以下のような弊害が生じます。
床ずれ | 長時間、皮膚の同じ部位に圧力がかかって褥瘡(じょくそう)をつくる |
関節拘縮 | 関節の可動域が制限されて、動作が難しくなる |
骨粗鬆症 | 骨密度が低下して、骨折しやすくなる |
循環器系の問題 | 血栓ができやすくなり、深部静脈血栓症や肺塞栓症のリスクが高まる |
呼吸器系の問題 | 肺の換気能力が低下して、肺炎や肺不全のリスクが高まる |
寝たきりでもリハビリが必要な理由
寝たきりの状態では筋肉の伸縮がなくなり、1週間で約10~15%の筋力が低下するといわれています。
さらに2週間、寝たきりのまま安静にしていると、下肢の筋肉が約20%萎縮します。
寝たきりによる筋力低下を完全に防ぐことは難しいですが、リハビリを取り入れることで身体機能を維持・向上することができます。また、人と関わるための社会性の維持や気持ちのリフレッシュにもつながります。
活動ができなくなると自立心や意欲が低下し、うつ症状が生じることもあります。リハビリを通じて、心の健康を保つための支援も重要です。
寝たきりでもできるリハビリ
寝たきりでもできるリハビリ方法をご紹介します。
マッサージ
体のさまざまな部位をマッサージし、筋肉を優しくほぐして、新陳代謝を促進します。手のひらや指圧による圧迫法は、血液やリンパの流れを良くします。また、関節の可動域の拡大やリラックス効果も期待できるでしょう。
ストレッチ
ストレッチをすると柔軟性が向上し、運動機能の回復が期待できます。
膝を曲げて両手で抱えてお尻の筋肉を伸ばしたり、両膝を立てて左右に倒して腰の筋肉を伸ばしたりすると良いでしょう。
筋力トレーニング
ベッドの上では、「手のひらでグーとパーをする」「足の指の開閉をする」といった横になっている体勢でもおこなえる筋力トレーニングがおすすめです。
また各人の状態にもよりますが、寝たきりであっても、仰向けからお尻を持ち上げる「ヒップリフト」や「ブリッジ」、足を伸ばした状態で上げ下げする運動もおすすめです。
無理のない筋力トレーニングを取り入れて、日常生活の動作の改善や身体活動の向上を目指しましょう。ストレッチやトレーニングをおこなう前にマッサージをして筋肉を柔らかくしておくと、効果が高まります。
寝たきりの方を介護するポイント
寝たきりの方を介護する際のポイントをご紹介します。
体位変換
2時間ごとに体位を変えて、床ずれを防ぎましょう。同じ体勢を長時間続けると、骨の突出部分が寝具に当たって圧迫され、床ずれを引き起こす場合があります。
床ずれは重症化すると筋膜や骨にまで傷が達してしまい、重症化する恐れがあるため、こまめに体の向きを変えることを心掛けてください。
清潔の保持
毎日体を拭いたり(清拭)、適度に入浴させたりして、体を清潔に保ちます。体を拭くことは、血液の循環を促進するため、床ずれや関節拘縮の予防にも効果的です。
専門スタッフが自宅に訪問し、専用の浴槽を使って入浴をサポートするサービスなどもあります。
拘縮(こうしゅく)とは
寝たきりなどによって、長い間身体を動かさないでいたために、筋肉や皮膚など関節周囲の軟部組織が伸縮性を失って固くなり、関節の動きが悪くなる状態を指します。
心理的サポート
寝たきりになると精神的なストレスを感じることが多くなるため、ご家族さまが話し相手になるなど、心理的なサポートが重要です。
心の健康を保つことは生活の質を高めて、リハビリや医療ケアへのモチベーションアップにもつながります。
寝たきりや廃用症候群などになる前に
寝たきりや廃用症候群などを予防するための具体的な方法は、以下のとおりです。
体を動かす
家事や庭仕事など、日常生活でできる身体活動を積極的に取り入れます。「近所へ歩いて買い物にいく」「寝転がらず座るようにする」など工夫をしましょう。
また筋力を維持するために、筋力トレーニングをおこなうと良いでしょう。筋肉が減少しやすいふくらはぎやお尻などの下半身を重点的に鍛えるのがおすすめです。
他にも、ウォーキングやジョギングなどの有酸素運動を取り入れると、心肺機能の維持にも役立ちます。転倒を予防するためのバランス改善を意識した運動も効果的です。
栄養管理と水分摂取
筋肉を維持・強化するために必要な栄養素であるタンパク質を魚、肉、大豆製品などから積極的に摂取しましょう。また、筋肉や骨の健康維持に役立つビタミンDとカルシウムの摂取も大切です。どうしても食事だけで摂取するのが難しい場合は、サプリメントを活用しましょう。
定期的に検査を受ける
定期的に筋力や骨密度のチェック、健康状態のモニタリングをおこないます。これにより早期にリスクを発見し、対策できます。
医師から健康状態に応じた適切なアドバイスや治療を受けて、寝たきりや廃用症候群を予防しましょう。
デイサービスを利用する
デイサービスを利用すると、気分転換になります。またリハビリを受けることで、筋力や体力の維持を目指すことができます。
デイサービスでは、専門のトレーナーが指導する運動プログラムや、理学療法士と作業療法士による個別のリハビリを受けることも可能です。
まとめ
寝たきりの方でも取り組めるリハビリ方法をご紹介しました。
寝たきりになると筋力の低下だけでなく、関節が動きにくくなったり、精神的な落ち込みを感じたりすることもあります。そのため、リハビリだけでなく、日常生活での活動を促し、適切な栄養を摂ること、そして定期的な健康チェックを受けることが重要です。
また、リハビリの成功には、焦らずに継続することが重要です。
寝たきりの方のリハビリを支えるために大切なことは、本人が諦めずに取り組めるよう、小さな進歩を一緒に喜び、励まし続けることです。
無理のないペースで日々の取り組みをサポートすることで、回復の可能性を広げる手助けになります。さらに、明るい雰囲気をつくることで、本人のモチベーションを高めることができます。
小さな努力が大きな成果につながることを信じて、一歩ずつ進んでいきましょう。
筋力トレーニングやリハビリをお考えなら「DSセルリア」で
当社では、訪問看護とリハビリ型デイサービスを提供しています。
「DS訪問看護ステーション」では、病気や障害のある方が住み慣れた地域やご自宅でその人らしい暮らしができるよう、看護師や理学療法士・作業療法士などがご自宅に訪問して、その人にあった看護やリハビリテーションを提供します。
「トータルリハセンター(TRC)」では、寝たきり状態になる前に筋力低下を防ぐトレーニングに加え、摂食・嚥下機能訓練や口腔清掃、口腔機能向上のためのプログラムを提供しています。
施設見学・ご相談は随時受け付けております
ご自宅での介護に関してお困りのことがございましたら、どうぞお気軽にお問い合わせください。
DSセルリア株式会社では、東京・千葉エリアにリハビリ型デイサービス「トータルリハセンター」や訪問看護ステーションを設け、地域に根ざした「訪問看護・リハビリテーションサービス」をご提供しています。
また介護従事職にご興味のある方も、お気軽にお問い合わせください。