姿勢や食事を意識して誤嚥性肺炎予防

誤嚥性肺炎予防

食べ物や唾液は、口腔内から咽頭(いんとう)と食道を経て胃へ送り込まれます。
誤嚥性肺炎(ごえんせいはいえん)とは食べ物や唾液などが誤って気管に入り込んでしまった際に、一緒に口腔内や喉の細菌・ウイルスが入り込むことで起きる肺炎です。

今回は高齢者に多い誤嚥性肺炎について「食事」や「姿勢」といった予防のポイントをご紹介します。

誤嚥性肺炎とは

食べ物や唾液が食道ではなく気管に入ってしまった場合、通常であれば、むせて気管から排出する反射機能が働きます。しかし、この機能が衰えてしまうと、気管に入り込んでしまっても排出することができなくなってしまいます。
このように、食べ物や唾液などが、気管に入ってしまうことを誤嚥といい、誤嚥が原因で起こる肺炎を誤嚥性肺炎といいます。

嚥下機能に関わるお口や全身の筋力、さらに免疫機能が低下する高齢者では、誤嚥性肺炎は高齢者の死因の上位を占めています。そのため毎日の食事や口腔ケアに気を配り、誤嚥性肺炎の予防に努めましょう。

誤嚥性肺炎の症状

食事中にむせたり、食後に咳が続いたりすることが多い場合は、誤嚥を起こした可能性を考慮しなければいけません。

誤嚥性肺炎の症状は、高熱や咳など、一般的な肺炎と共通する部分もありますが、高齢期になると症状が出にくいことも。下記のような些細な症状が、誤嚥性肺炎だったといったこともあるため注意が必要です。

  • 元気がない
  • 食事の時間が長くなる
  • 食後に疲れてぐったりする
  • ぼーっとしていることが多い
  • 口の中に食べ物をため込んで飲み込めない
  • 体重が徐々に減ってきた
  • 夜間に咳込む

日常生活の変化に気を付け、これらの兆候がみられたらすぐにかかりつけの医師や病院に相談してください。誤嚥性肺炎の早期発見につながります。

誤嚥を防ぐために気を付けたい6つのポイント

誤嚥性肺炎を防ぐためには、普段の食事の姿勢や食事形態などに気を配ることが大切です。

食事のときの姿勢について

正しい姿勢で食事をとることで、飲み込みやすくなり誤嚥のリスクを低減できます。
たとえば頭が後ろに倒れていると、あごや舌の動きが制限されてしまうため、食べ物を飲み込みにくくなります。

寝たきりの方を介助する場合、無理に座らせる必要はありませんが、飲み込みやすい姿勢を整えるなどの工夫で誤嚥を防ぎましょう。

椅子に座っての食事

  • あごは引き気味
  • からだとテーブルの間に握りこぶし一つくらいのすき間
  • テーブルの高さは、腕を乗せてひじが90度に曲がるくらい
  • 背は90度
  • イスの座面の高さはひざが90度に曲がるくらい
  • 足の裏は床(難しい場合はフットレストなどを用意)にきちんとつく高さ
食事の姿勢(座位)
CHAIR

ベッド上での食事

  • 足がずり下がらないよう、足の裏にクッションをぴったりつける
  • ひざは軽く曲げた状態になるよう、ベッドの折れ目にひざを合わせるか、ひざ下にクッションを置き、ずり落ちないようにする
  • 腰はベッドの折れ目にきっちり合わせる
  • 首が後ろにそらないように、頭に枕やクッションを使う
  • リラックスした姿勢をとり、まひなどがある場合は枕やタオルなどを利用して、からだが傾かないようにする
  • 背もたれが30~60度になるようにギャッジアップする
ベッドでの食事
BED

食べ物の形態

食べ物の形状や硬さなどの形態も誤嚥予防において重要なポイントです。

要介護者それぞれの年齢や健康状態、お口の状態に合わせた食事形態での提供が重要です。たとえば、むせにくく、飲み込みやすい食事形態は「やわらかい」「とろみがあり、まとまりやすい」「べたつかない」といった工夫をしたものです。

飲み込みにくい、むせやすい食材はとろみをつけるなどの工夫をすることで、嚥下機能の衰えた高齢者でも摂食しやすくなります。

とろみ

飲み込みにくい・むせやすい食べ物

  • 水・お茶・ジュースなどのサラサラとした液体
  • 味噌汁などの液体と固体が混ざっている食べ物
  • パン、ちくわ、ゆで卵などのパサパサしている、まとまりにくい食べ物
味噌汁

こまめな水分補給

水分が不足すると嚥下の際に食べ物が喉に詰まりやすくなります。そのため、食事の前に水分摂取をし、お口の中をしっかりと湿らせることが大切です。
一度に大量の水分を摂ることは、むせやすくなるため誤嚥を引き起こす可能性があります。水分摂取はこまめに行うことを心掛けましょう。

口腔内の細菌の量を減らす

誤嚥性肺炎の予防のためには「介護者やご自身での口腔ケア」と「定期的な歯科医院での口腔ケア」の両方が重要です。

口腔内の細菌や歯垢を適切にケアすることで口腔内の衛生状態を維持し、感染症や誤嚥性肺炎の予防につながります。歯磨きやうがいを定期的に行うことで、口の中の細菌を減少させましょう。
入れ歯を使用している場合は、清潔な状態を保つことがとても重要です。入れ歯のお手入れを怠ると入れ歯表面の細菌が繁殖します。それらが誤嚥により肺に到達し、誤嚥性肺炎の原因になってしまいます。

ご存じですか?口腔ケアのこと」では、口腔ケアの重要性や効果的なケアのために、知っておきたいポイントなどをご紹介していますので、ぜひ参考にしてください。

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普段から免疫力を高めておく

免疫力向上にはバランスの良い食事、適度な運動、十分な睡眠が必要です。
とくに、栄養バランスを意識した食事は免疫力をサポートし、誤嚥予防だけでなく全体的な健康にも寄与します。いつまでもしっかりと食事をとれることが、体の健康や免疫にもつながります。食事形態や姿勢に気を付けてしっかりとお食事をとるようにしましょう。

食事や睡眠は気を付けることができても、日常的に適度な運動を行うのは難しい、自分では体をうまく動かすことができないという方も多いのではないでしょうか。
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口腔体操で誤嚥性肺炎予防

パタカラ体操などで誤嚥性肺炎の予防が可能です。
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高齢になると体の筋肉と同様にお口周りが衰えてしまいます。パタカラ体操などのトレーニングは、食べるため以外にも会話や表情を豊かにすることにもつながります。
ご自宅や施設でも手軽にできますので、普段の生活に取り入れてみてはいかがでしょうか。

誤嚥予防はDSセルリアの口腔リハビリテーションで

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今回ご紹介した、誤嚥性肺炎の予防にも口腔リハビリは欠かせません。「しっかり噛める」「飲み込める」といったお口の機能向上のリハビリに一緒に取り組みましょう。

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